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イリイッチの長靴
イリイッチのながぐつ
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「日本プロレタリア文学集・38 プロレタリア詩集(一)」 新日本出版社
1987(昭和62)年5月25日
初出「プロレタリア芸術」1927(昭和2)年11月号
入力者坂本真一
校正者雪森
公開 / 更新2016-01-12 / 2015-12-24
長さの目安約 2 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


イリイッチの長靴は十年を歩み続けた!
ボロボロで、デコボコだ、破れかかっている。健康にあふれて、はち切れ相だ
わざと盛り違えた処方箋や、持ち古るされた殺戮によって真赤な血を塗りたくられている
俺達は知ってるんだ!
――イリイッチの赤い長靴を
――その正確な跫音を
――襤褸っきれに包まれた「健康」を
それこそ――
全ての鞭を堪えて歩む方向ある操作だ
労働者と農民の国の正しいまなざしだ
戦争の脅威に抗する力学だ
歴史の精密なる計算を担う健康だ
世界の隅々より一切を取上げる闘いだ
赤き金曜日の出発と、サッコ、[#挿絵]ンセッチに対する糺問を
支那の沸騰と「支那より手を引け!」の合言葉を
ウインの街頭にツリ下げられた官服とサーベルの報告を
正しく歩ませ、訊問し、切り刷く明瞭な導きと勇敢な闘いだ

イリイッチは死んだ!
だが――
黄色なしみったれた雰囲気を押しのけて
十年間歩み続けたイリイッチの長靴を「群集の日」まで歩ませろ!
 この歩みに抗する一切の系統を
 イバラを積重ねるふやけた脳髄を
 戦争を強要する兵隊靴の威喝を
歴史の教科書にまで叩込むんだ!
博物館にまで押し入れるんだ!

赤きイリイッチの長靴の祝祭に
世界の隅と隅と、角と角より
激怒と悲惨と歓喜と号泣を含んだ報告と
それらの報告と報告より盛り上る出発と
隅と隅、角と角との強固な結び附けと
いら立たしい歴史の興奮を
――送るんだ[#挿絵]
世界の同志よ!
イリイッチの長靴を歩かせろ!
(『プロレタリア芸術』一九二七年十一月号に発表 同年十一月マルクス書房刊『一九二七年プロレタリア詩集』を底本)



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