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東京
とうきょう
作品ID53992
著者桜間 中庸
文字遣い旧字旧仮名
底本 「日光浴室 櫻間中庸遺稿集」 ボン書店
1936(昭和11)年7月28日
入力者Y.S.
校正者富田倫生
公開 / 更新2011-12-26 / 2014-09-16
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


 鈴かけの街路樹。葉の落ちつくした梢を空つ風がうなつて通る十二月です。自動車と電車の音のみが、いやにやかましい所、此處は内務省大藏省復興局などの門を並べたいかめしい? 丸の内です、バラツクの大藏省復興局、それ等の門だけが威嚴をそへようとつとめてゐる。

 音の波、光の波、人の波。三つの波が交錯して夜の商店街を構成してゐる。
 競つてうならす蓄音機の頓狂なひびき、ラヂオを始めとして露店のたゝき賣り、それからとび拔けて高く調子のよくないのは街頭演説の叫びである。何といふかしましさだ、何といふカシマシイ音のコーラスだ。
 そうした音の中を又すばらしい光が流れてゐる。店頭の裝飾の光りは近代都會人の嗜好を如實に現はしてゐる、濃緑・紅・青・さうした光光の中をグラリグラリと動いて行く人の群。群。
 十二月一日一齊に始めた歳の市は全市をすつかり師走氣分にかへてしまつた、而しかうした賑やかさの中にも不景氣さが充分伺はれる。金解禁を前にひかへての大亂賣、しかしそれに伴はぬ賣上は不景氣をはつきりと言ひ表はしてゐる。
 あわただしい師走は故郷遠く來てゐれば殊更に淋しい。



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