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労働祭歌(Ⅰ)
ろうどうさいか(いち)
作品ID54024
著者松本 淳三
文字遣い新字新仮名
底本 「日本プロレタリア文学集・38 プロレタリア詩集(一)」 新日本出版社
1987(昭和62)年5月25日
初出「文芸戦線」1926(大正15)年5月号
入力者坂本真一
校正者雪森
公開 / 更新2015-10-13 / 2015-09-01
長さの目安約 2 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


序曲

メーデー! われわれはすでに広場に集合している
幾千、万!
黒い旗、赤い旗、するどい槍
光り! われわれはすでに広場に集合している

集合! 確乎たる同僚精神
彼方ほうはいたる都会をのぞんで
決意! われわれはすでに広場に集合している
しかも、あとからあとから集まる

ああ、この偉大なる黒い群集
今日を待っていたこの群集
裂けたまなじり、鳴る肩瘤
額に浮き上り輝く汗
汗、汗、汗、汗
この素敵な
汗の、群集、群集、群集……

見よ! 太陽も天に怒って

そうだ、弱けれども強い力は
この太陽と群集との
握手――この熱、この素朴な
信頼――ここにこそはじめて生れて

おお、その力の溢れる歌声
おお、その喜びの波立つ音
林はひれ伏して葉を鳴らさず
海はその波を今にごさず
すべての人々のこの頭上に
すべて同じようにこの王冠!
そうだ、これこそは吾等の誇りだ
われらの悉くが持つ誇りだ
誇り?
歌おうとこの世界だ
誇り? 叫ぼうとこの自由だ
なんのほがらかに開けた正義だ

そうだ、ああ歌え、ああ叫べよ
蛮声――その中に光っている
もっとも聖らかなそして高貴な
力、力、力、力
新時代を
ここに打っ立てる歓喜の声
彼等の暴虐のとりでを衝く
声、声、声、声
ああ素敵な……

開け! もう彼方に鉄鎖がちぎれる

しかり、この力、この集合
握手! メーデーだ、この太陽
歌だ、洪水だ、この嵐の
赤い旗、黒い旗
旗、旗
槍!
光り! われわれはすでに戦いの用意をしている。

行進曲

ヴヮッ、ヴヮッ
ヴヮッ、ヴヮッ
どし、どし、どし、どし

ヴヮッ、ヴヮッ
ヴヮッ、ヴヮッ
どし、どし、どし、どし

進め! 進め!
旗! 旗!
進め! 進め!
旗! 旗!

ヴヮッ、ヴヮッ
ヴヮッ、ヴヮッ
どし、どし、どし、どし

ヴヮッ、ヴヮッ
ヴヮッ、ヴヮッ
どし、どし、どし、どし

振れ! 振れ!
旗! 旗!
振れ! 振れ!
旗! 旗!

ヴヮッ、ヴヮッ
ヴヮッ、ヴヮッ
どし、どし、どし、どし

ヴヮッ、ヴヮッ
ヴヮッ、ヴヮッ
どし、どし、どし、どし

みよや
われらの
世界だ
光りだ

聞けや
われらの
時代だ
ひびきだ

輝やく
輝やく
輝やく
輝やく。
(『文芸戦線』一九二六年五月号に発表 一九二九年一月平凡社刊『新興文学全集』第十巻を底本)



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