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一疋の昆虫
いっぴきのこんちゅう
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「日本プロレタリア文学集・39 プロレタリア詩集(二)」 新日本出版社
1987(昭和62)年6月30日
初出「詩精神」1935(昭和10)年6月号
入力者坂本真一
校正者雪森
公開 / 更新2014-06-09 / 2014-09-16
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)
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本文より


一疋の足の細長い昆虫が明るい南の窓から入ってきた
昆虫の目指すは北 薄暗い北
病室のよごれひびわれたコンクリートの部厚い壁、
この病室には北側にドアーがありいつも南よりはずっと暗い

昆虫は北方へ出口を見出そうとする
天井と北側の壁の白堊を叩いて
ああ幾度往復しても見出されぬ出口
もう三尺下ってドアーの開いている時だけが
昆虫が北へぬける唯一の機会だが、
昆虫には機会がわからず
三尺下ればということもわからぬ
一日、二日、三日まだ北へ出口を求める昆虫は羽ばたき羽ばたき
日を暮す
南の方へ帰ることを忘れたか
それともいかに寒く薄暗い北であろうと
あるのぞみをかけた方向は捨てられぬのか、

私は病室に想う一疋の昆虫の
たゆまぬ努力、或は無智、
(一九三五年五月七日作『詩精神』同年六月号「今野大力特輯」に発表『今野大力・今村恒夫詩集』改訂版を底本)



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