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胸に手を当てて
むねにてをあてて
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「日本プロレタリア文学集・39 プロレタリア詩集(二)」 新日本出版社
1987(昭和62)年6月30日
初出「詩精神」1935(昭和10)年6月号
入力者坂本真一
校正者雪森
公開 / 更新2014-06-21 / 2014-09-16
長さの目安約 2 ページ(500字/頁で計算)
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本文より


かつて私は
悪事をやった立場に立たされた時
こう憎々しげに吐きつけられたものだ、
「胸に手を当てて、よっく考えて見ろ!」

私は今、胸に手を当てて
静かに激しく想っている。
私は悪事をやった為だろうか。

いや、私は悪事をやったのではない
悪事は彼等がやったのだ。
彼等は悪事を犯していながら
私をつかまえて手足を縛しておいて
「お前は悪人だ、
 お前等は悪事の張本人だ」
そう頭から、権威をもってどやしたのだ
その時何故、私は言わなかったのだ、
「いや断じてちがう、悪人は手前達だ、その背骨をいまに叩き折ってやる!」と

私は今胸を病んでいる
胸を病んでいる私は胸に手をおいて
胸の中に、鼓動しているかすかな響きをかぞえる
この響きは次第に私の内臓が細菌にむしばまれてゆく、そのかなしい音楽なのだ、
こんな音楽を誰が私の胸にかなでるのか、
かなでるのは私の弱った肉体なのだが、
こんな弱いからだにさせて
あけても、くれても天井ばかりを見つめさせ
私の老母を もう米が一粒もなくなったと言って泣かせたり
私の弟に魂のない人間となって働いてもらわねばならないのは、
「胸に手を当てて考えて見ろ」と言った
あいつらのためなのだ、私はあいつ等を憎悪する
「あいつこそ悪人ではないか! 仮面のあいつこそが」
(『詩精神』一九三五年六月号「今野大力特輯」に発表『今野大力・今村恒夫詩集』改訂版を底本)



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