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農村から
のうそんから
副題――失業反対――
――しつぎょうはんたい――
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「日本プロレタリア文学集・39 プロレタリア詩集(二)」 新日本出版社
1987(昭和62)年6月30日
初出「プロレタリア詩」1931(昭和6)年4月号
入力者坂本真一
校正者雪森
公開 / 更新2016-01-24 / 2015-12-24
長さの目安約 2 ページ(500字/頁で計算)
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本文より


――よう戻って来た
娘の手を握りながら
両親は娘一人ふえたこれからの生活を考える
正月だと言って
餅を鱈腹食うて寝ては居れなかった
地主の塀からきこえる
景気のいい餅搗きの音に
餓鬼どもは咽喉をグウグウいわせて駄々をこねた
お父うが鍬をかついで
裏口からコッソリ出かけようとしたとき
お母あはどう言って泣いたか
――三ヵ日にようもまあ、仕事をするだ
フウが悪うて………

米の有り余る豊年に
百姓の納屋はがらん洞だ
出来がよい、と聞けば
――いつかの不足米を、とぬかして
ゴソッと持って行く奴め
豊年じゃいうておどる間抜けがどこにある
百姓の生活は何時もかわらぬギリギリだ
豊年飢饉!
バスケットをぶらさげて
東京の工場を追ン出された娘は帰って来た

――操業短縮 強制帰国
――操業短縮 強制帰国
東京モスリン××工場に戦いの火はもえた
人殺しの馘首に抗して
二千の女工たちはストライキへ入った
だが見ろ!
大衆党幹部のポケットへ札束が入り
女工たちの要求は勝手にゆがめられた
失業地獄のどん底で
垢ほどの手当が何になる
泣き 泣き
女工たちの帰って行くのは何処なのか
豊年飢饉になやみ 疲れ
くたばりかけの農村へ!
――よう戻った 達者でよかった
だが、帰って来た娘は
もう肺がくさりかけだ
工場での絶え間ない労働強化に体を痛め
荒い野良仕事は出来そうにもない!
見ろ!
資本家の死物狂いの重圧は
くたばりかけの農村にまで襲いかかる
産業合理化に押しひしがれ
わしら百姓が
さらに背負わされる数え切れぬ苦労の山々!
わしはあんまり暢気すぎた
遠いようで決して遠くない
他人のようで自分のことだ
農村から!
そうだ、わしらは叫ぼう
失業反対だ!

暗い!
くたばりかけの村は暗い!
だがわしらは貧乏だから賢かったぞ
わしらは合点した
わしらは行こう
此の暗さから抜け出でて一つのあかるい出口へ!
わしらは一人じゃねえ
金輪際ガッチリと一緒だぞ!
わしら百姓は一つの赤旗の下、全農へ密集る!

おっひろがった野良で肩がはる!
わしらは
春さきの風の中をまっすぐに行きながら
此の闘いをたたかい抜こう!
失業反対だ!
(『プロレタリア詩』一九三一年四月号に黒島謙名で発表)



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