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兄ちゃん
にいちゃん
作品ID54103
著者木村 好子
文字遣い新字新仮名
底本 「日本プロレタリア文学集・39 プロレタリア詩集(二)」 新日本出版社
1987(昭和62)年6月30日
初出「プロレタリア詩」1931(昭和6)年12月号
入力者坂本真一
校正者雪森
公開 / 更新2015-08-08 / 2015-08-29
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


吹きっさらしの田圃には
もう、村の誰も出ていない
だのに、私の家では麦蒔きがすまない
取り入れ半ばに兄ちゃんが召集されて
あとに残った女手二つ
私とおっ母とであくせくと麦蒔き

毎日、朝早くから晩おそくまで
かたい刈株をうちかえし、うねをつくり
せっせと蒔きつけを急ぐ私達――
かよわい女手で、夕方、ぐったり疲れて家に帰れば
地主の奴が、がみがみ年貢を取りたてにやってくる

おお兄ちゃんが満州へ引ったてられて行ってから
急に、めっきりやつれたおっ母
老いさらぼけたそのやせ腕に
ふり上げる一鍬一鍬!
私の胸は戦争への憎しみを深める
勝っても、負けても、戦争が私達に楽な生活をよこしはすまいに
働き盛りの貧農の息子を奪って
み国の為にと殺し合せるなんて………

あああの寒い満州でたたかう兄ちゃん!
兄ちゃんの身は無事かしら
私はおっ母をいたわりはげまし
兄ちゃんのかわりにせっせと働くけれども――
戦争への憎悪で、全身はわななく。
(『プロレタリア詩』一九三一年十二月号に発表)



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