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赤いねこ
あかいねこ
著者
文字遣い新字旧仮名
底本 「日本児童文学大系 第一一巻」 ほるぷ出版
1978(昭和53)年11月30日
初出「金の船」キンノツノ社、1922(大正11)年2月
入力者菅野朋子
校正者noriko saito
公開 / 更新2013-10-22 / 2014-09-16
長さの目安約 12 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 雨が しとしとと ふりました。その あくる日の おひるころ、一人の おぢいさんが、町の つじに 立ててある 大きな かんばんを 見ながら、ひとりごとを いって ゐました。
「この ゑは、何の ゑだらう、火事の ゑかしら。」
 おぢいさんは、しきりに かんがへこんで ゐました。そこへ 一人の 男の 子が とほりかかって、
「おぢいさん、何を かんがへて ゐるんですか。」
と、たづねました。おぢいさんは、
「この ゑは、火事の ゑなんだらうか。どこかに せうばうの えんしふでも あるんですか。」
 それを きいた 男の 子は 笑ひながら 申しました。
「ちがひますよ。これはね、こんや 町の 公会堂に お話が あるって、くゎうこくして あったんですよ。それが 赤インキで 書いて あったもので、ゆうべの 雨に うたれて、こんなに ながれて しまったんです。」
「さうですか。それで わかった。」
 おぢいさんは、おうちの 方へ かへりました。そして となりの 店から、赤インキを ひとびん 買って 来て、それで かみへ 字を かきました。何枚も かきました。板ぎれへ ゑを かきました。何枚も かきました。
 それを 見た おばあさんは、ふしぎに 思って、
「おぢいさん、そんなに 同じ ゑや 字を たくさん 書いて、どう するんですか。」
と、ききましたが、おぢいさんは だまって、その かみと 板ぎれとを もって、井戸ばたに 出てゆきました。そして 水を くんで 字を かいた かみに、ざあざあ ぶっかけますと、字は 見る見る きえて しまひました。板ぎれに 水を ぶっかけますと、ゑは めちゃめちゃに きえて しまひました。それを 見た おぢいさんは、
「これは いけない。こんな インキで 書いても、水の 中に おとしたら、みんな きえて しまふ。よし、わしが、りっぱな インキを こしらへる。雨に うたれても、水を ぶっかけても きえない、すばらしい インキを こしらへるぞ。」
 おぢいさんは、すぐに くすりやへ いって、いろいろの くすりを 買って 来ました。
 そして、うらの 小屋に はいって、まい日 まい日、赤インキを つくりました。そして とうとう、雨に うたれても、水を ぶっかけても きえない 赤インキを、はつめいしました。
 そこで おぢいさんは、その 赤インキを、町へ 売りに出かけました。
 学生も、さかなやの をぢさんも、やほやの 小ぞうさんも、みんな 大よろこびで 買ひましたので、水に ながれない 赤インキは、見るまに 売りきれて しまひました。
 おぢいさんは、からっぽに なった はこを かついで お家へ かへりました。お家では おばあさんが、手の ゆびを まっかに して、おぢいさんの つくった インキを、びんに つめて ゐました。
 その あくる日も…

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