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親父の言葉
おやじのことば
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「日本プロレタリア文学集・38 プロレタリア詩集(一)」 新日本出版社
1987(昭和62)年5月25日
初出「プロレタリア詩」1932(昭和7)年1月号
入力者坂本真一
校正者雪森
公開 / 更新2016-02-16 / 2015-12-24
長さの目安約 2 ページ(500字/頁で計算)
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本文より


この頃の寒さに
足腰の痛みに
わしは憶い出すんだ
忰のことが
やっぱり親子のつながりだわい

「お前等にもわかる時が来る」
今になって彼奴の言葉が身に滲みてくる
彼奴の云ったこと
彼奴のやって来たこと
やっぱり貧乏人のやらねばならんことだったのだ

憶い出すと身震いがする
彼奴の入営した翌年
春の大争議にわしら四百の小作は
××川の土堤で警官と軍隊に取り巻かれた
鍬が飛んだ、石が飛んだ
剣が抜かれた
そしてわしまでしょっぴかれたんだ

地主小作の争いに軍隊が飛び出した
あれから村が変って来たんだ
わしのあたまも
嬶のあたまも
警察は地主の犬
幾どの争議でわし等は知った
そんだがわし等はたまげた
まったくたまげて終うた
軍隊も地主の犬――
わし等は一時この世がどうなるかと思った

忰がいった秋の演習に
ビラを撒いて憲兵に捕まった時
わしは彼奴と非呶い喧嘩をした
「戦争反対」――ビラの文句に
わしは嬶と一緒になってがなりつけた
「いまにわかる時が来る」
その時彼奴は悟を開いた禅坊主みたいに
平気なつらで云ったっけなあ

実際にあったんだ
この目でみたんだ
そして頑固な土百姓のあたまが悧巧になったんだ
わしを怒らした忰の言葉が
役にたったんだ

全警察もわしらの敵
全軍隊もわしらの敵
だがわし等にも味方はある
そうだ、あの時
かねば持って応援に来てくれた都会の労働者 あれこそがわし等の心強い味方なんだ

奴等の金儲けの為の戦争は大反対だ
都会でも農村でもみんなやってる
忰は満洲の野っ原でそれを
弟の野郎も村の若い奴等とビラ貼りに出かけた
わしも出かけよう
今夜は組合の書記さんが来て**事件を語るそうだ
新聞になど出ないほんとの話をするとのこと
野郎共のからくりを知る為に
忰達の便りを聞く為に
疲れてはいるがわしも出かけよう。
(『プロレタリア詩』一九三二年一月号に発表)



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