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特殊部落の成立沿革を略叙してその解放に及ぶ
とくしゅぶらくのせいりつえんかくをりゃくじょしてそのかいほうにおよぶ
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「被差別部落とは何か」 河出書房新社
2008(平成20)年2月29日
初出「民族と歴史 第二巻第一号 特殊部落研究」1919(大正8)年7月
入力者川山隆
校正者門田裕志
公開 / 更新2013-03-08 / 2014-09-16
長さの目安約 99 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

1 緒言

 私はただ今添田地方局長から御紹介になりました喜田貞吉でございます。本日特殊部落改善救護の事に御熱心な諸君のこの御集まりの席へ出まして、所謂特殊部落の事に関し、不束かなる研究の一斑を述べさせて戴くの機会を得ましたのは、私にとってまことに光栄であり、かつまた幸福であることと存じます。
 大体私は日本の古代史を専門に研究致している者でございまして、その研究上から、日本の民族を明らかにするという必要を感じました結果、近年種々の方面から、広くこの方の材料を蒐集し、不十分ながらも潜心これが調査研究に従事致しているのであります。その調査研究の結果は、これまでかねて私どもの仲間で二十年来発行している、「歴史地理」という雑誌上に掲載しておりましたけれども、段々材料も殖えて参りまするし、一方には時勢の要求も多くなりまして、とてもその雑誌上のみでこれを発表する事が出来なくなりました。また該雑誌の性質としましても、民族に関する事ばかりを多く載せるということも、事情が許しませぬ。そこで本年から、その雑誌とは別に、特に民族方面の事を主として掲載する機関と致して、単独で「民族と歴史」という小雑誌を発行する事に致しました。あたかもその際丸山救護課長から、今回の御集まりのあることを承りまして、ただ今この席に於いて、私の民族研究の一部分たる、所謂特殊部落に関した事項を申し述ぶるの機会を得ましたのでありまして、時にとりまして特に私の愉快に感ずるところでございます。
 一と口に日本の民族と申しましても、余程漠然たるもので、詳しく申さば沿革上種々の系統、種々の階級にも分れるのでありますが、私の研究はその全体にわたったもので、特に或る一部分の研究にもっぱら没頭しているという訳ではありません。しかしここにお集まりの諸君は、その中について、特に所謂特殊部落、内務省では細民部落と云っておられますところの、或る特別なる一部族について、その改善救護に御尽力をなさいまする御方々でありますから、私も本日は、特にこの方面の事について申し述べさせて戴きたいと思うのであります。
 特殊部落の研究は、今日ことにその必要を感ぜられている事と存じます。それはわざわざ私が申し述べずとも、諸君も御同感の事と存じます。御承知の如く、欧州大戦の結果と致して、民族自決とか、人種差別撤廃とか申す事は、全世界の問題となっております。過激思想の波及ということも、世界一般を恐怖させているのであります。この際に於いて、これを内にしては昨年の米騒動という事件もありました。それ以来この特殊部落の問題は、余程一般社会の注意を引く事になっていると存じます。私はこの部落民が、果して多く米騒動に関係した事実ありや否やを詳かにしませぬ。しかし仮りに関係があったとすれば、それは幾分彼らの境遇、特に彼らの一般社会に対する反感が、これをなさしめたのであ…

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