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特殊部落と細民部落・密集部落
とくしゅぶらくとさいみんぶらく・みっしゅうぶらく
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「被差別部落とは何か」 河出書房新社
2008(平成20)年2月29日
初出「民族と歴史 第二巻第一号 特殊部落研究」1919(大正8)年7月
入力者川山隆
校正者門田裕志
公開 / 更新2013-03-13 / 2014-09-16
長さの目安約 8 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 従来普通に特殊部落と云っておった我が同胞中の或る部族のことを、近ごろ内務省あたりでは、細民部落といっている。細民とは貧乏人の事である。なるほど特殊部落には貧乏人が比較的多いから、その多数についてこれを細民部落というのも、あながち理由のないことではないが、その実この部落にも細民でないのが少くなく、所謂特殊部落以外にも真に細民部落と呼ぶべきものが多いのであるから、この侮辱した様な名称が妥当でない事は言うまでもない事である。近ごろさらにこれを密集部落というものもある。なるほど彼らの多数は陋屋密集の状態にいるから、これを密集部落というのもまた理由のない事ではないが、その実地方によっては密集しておらぬのも少くなく、特殊部落以外にも事実上真に密集部落と呼ぶべきものも多いのであるから、この名称もまた妥当とは言いにくい。
 最近の新聞を見ると、しばしば普通の貧民窟の事を、細民部落とも密集部落とも書いた場合がある。これ実に真を得たもので、自分はこの語がかくの如くに、所謂特殊部落以外のものにも用いられ、その代りに所謂特殊部落に於いても、もはや改善救済を要せぬ様なものは、この包括したる名称から除外する様になるのを希望するものである。しかしながら、かくなったでは、所謂特殊民の意味はなくなってしまい、何らかの必要上、特殊民を区別して表わそうとする場合の目的は、それでは副わぬものであることを承知せねばならぬ。
 部落の名称については、自分は別にこれを論じておいた。したがってここにはこれらの名称の是非を論じようとするのではない。所謂特殊部落が、何が故に細民部落と言わるるまでに細民の多い部落であり、何が故に密集部落と言わるるまでに、住居の密集した部落であるかということを、歴史上から観察してみたいのである。
 古代にあっては下級民に余れる資産なく、多数は所謂その日暮らしであって、一旦飢饉でもあると、餓[#挿絵]たちまち路に横たわるというのが普通であった。徳川時代に於いても、百姓は活かさず殺さず、その中間を泳がして行くというのが、幕府施政の方針であった。したがって下民は一般に貧乏であった。今でも文明の風の多く吹き渡らず、生活の向上に憧憬れる事を知らぬ桃源場裏の村落へ行ってみると、一・二室しかない粗末なる家に荒蓆を敷いて一家族が団欒し、所謂父はててらに婦はふたのした気軽な暮らしに、酔生夢死しているものが少くない。この状態が一般に行われた際にあって、未だ人口も少かった特殊民の状態はどうであったであろうか。別項「エタに対する圧迫の沿革」の中に述べた如く、彼らは或る種の職業を独占し、或る種の特権を享有して、よしや彼らが向上心に欠如し、幾分社会から賤しめられていたとしても、その生活上の安全は、普通民に比してむしろ保障された方であった。したがって富豪というべき程のものも、少くなかった様である。天和・貞享…

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