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「特殊部落」と云う名称について
「とくしゅぶらく」というめいしょうについて
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「被差別部落とは何か」 河出書房新社
2008(平成20)年2月29日
初出「民族と歴史 第二巻第一号 特殊部落研究」1919(大正8)年7月
入力者川山隆
校正者門田裕志
公開 / 更新2013-03-13 / 2014-09-16
長さの目安約 12 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

本編は上掲諸編の記事と重複するところことに多きを校正の際心付きしも、今さら改むる能わず。幸いに概論に対する下手なる詳説として、寛宥あらんことを乞う。(貞吉)

 明治・大正の今日にも、特殊部落の名はなお保存せられている。もとは「特種部落」と書いたそうであるが、必ずしも種族を異にするという訳でもなく、いたずらに彼らの悪感を生ぜしむるのみであるというので、文字を「特殊」と改めたと聞いた。
 しかし「特種」でも、「特殊」でも、彼らの嫌がるのは同一だ。そこで内務省あたりではこれを「細民部落」と改めたとかの説があるが、実際上彼ら必ずしも細民のみでなく、また彼ら以外に真の細民部落も少からん事であるから、これも行われそうにない。本来何とかの名称を以て、彼らを区別せんとするのが間違いである。自分がしばしば所謂特殊部落民と懇意になって後に、第一に彼らから受ける注文は、願わくば特殊部落の名称を以て、世間と区別する事をやめてもらいたいとの事である。それが出来ねば、せめては何とか同情ある名称と取りかえてもらいたいというのである。まことにもっともな注文で、真実同情に堪えぬ。折角彼らが自ら反省して、改善を加えようとしても、ただ「特殊部落」という四字の為に裏切られて、失敗に終わる場合が多いのである。しかしながら、特殊部落の名を以て世間から区別せられる事をやめしめるには、まず以て区別するの必要なきに至らしめるを要とする。既に何らかの区別をなす必要がある以上、よしや「特殊部落」の名をかえて、これを貴族部落と改めても、「模範部落」と改めても、いやしくも区別すべき或るものの存する間は、到底彼らの希望に副う事は出来ぬ。その失敗の実例は近く朝鮮に存する。朝鮮にはもと才人・禾尺などと云って、一種の賤まれた人民があったが、世宗王の時彼らの区別を廃し、これを普通民と同じくする為に、これを「白丁」と呼ばしめた。「白丁」とはもと普通民の称呼である。ところが世人は、これを「新白丁」と呼んで、相変らず区別することを止めない。なお我が明治四年に於いて、エタ・非人の称を廃して平民とした場合に、世人はこれを新平民として、依然その区別を止めなかったと同様である。そこで政府は、さらに「新」の字を加える事を禁じた。ところが今度は、普通民の方が従来の「白丁」の称を捨てて、この特殊民のみを「白丁」と呼ぶことになった。今日では「白丁」と云えば、これ直ちに新白丁、すなわちもとの才人・禾尺等の名称となってしまっている。そしてその「白丁」は、相変らず賤しいものとして区別せられているのである。言語や名称は時代によって意味が違って来る。「お前」という言葉は昔は至尊の御前に称するもので、先方に対する最敬語であった。しかるに後世次第にそれが濫用せられて、今では普通に目下の人にのみ用うることになった。自分はかつて隠岐に旅行して、或る片田舎の小さい…

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