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編輯雑感
へんしゅうざっかん
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「被差別部落とは何か」 河出書房新社
2008(平成20)年2月29日
初出「民族と歴史 第二巻第一号」1919(大正8)年7月
入力者川山隆
校正者門田裕志
公開 / 更新2013-02-27 / 2014-09-16
長さの目安約 6 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 自分がこの特別号の発行を思い付いたのは、本年二月下旬、東京築地本願寺で催された同情融和会の折であった。かくて爾来材料の蒐集に着手し、四月にその計画を発表して各地の有志家に材料の提供を依頼し、五月の本誌上に始めて予告を掲げた様な次第であったが、今やともかくもこれだけのものを発行せしむるに至ったのは、同情者各位とともに愉快に堪えぬところである。
 自分は歴史家として早くから賤民の沿革に注意せんではなかった。しかしそれは主として大宝令などに見える古代賤民の事であって、現在の部落の起原沿革については多くの興味を有しておらなかった。いつの事であったか、何でも過日物故せられた東京府知事の井上博士が、まだ内務省の何とか局長であった頃、自分も文部省に奉職しておったが、同博士から頼まれて、帝国教育会館で開かれた報徳会かの会合に列席し、賤民の民族的研究を述べた事があった。この時この方面の研究には確かに自分よりも先輩たる柳田國男君から、有益なる注意を賜わったり、からかわれたりした事を記憶する。今や不十分ながらもこの特別号が出来て、しかもこれをその井上博士に見てもらう事の出来ないのは遺憾に堪えない。しかし爾来ますます健在にして、引続きこの方面の研究を重ねておらるる柳田君から、親切なる叱正を得る事の出来るのは最も幸いである。
 実際当時自分は中古以来の賤民の事について、お恥しながらすこぶる無知識であった。明治四十五年に「読史百話」を発行して、その中に犬神人の事に関し、とんでもない間違いを書いて、やはり柳田君から親切なる注意を得た事があった。まことに恐縮汗顔の次第で、早速調査を重ねて「歴史地理」の誌上で訂正的考証文を発表した。爾来この方面にも深く趣味を感ずる事になったのは、一に先輩柳田君の賜である。
 自分が始めて部落に出入りしたのは、確か明治四十二年の事であったと記憶する。当時自分は京都の縄手三条下る処に寓居しておった。したがってその付近にある旧悲田院の部落や、旧エタの頭村と言われた天部部落を通過する機会が多く、自然にその現状に通暁するに及んで、もとエタ非人と並称せられ、法制上からはむしろ下位に見られた旧非人の方が立派になって、世人から殆ど特殊扱いにされていないのに反して、かえって上位にあるべき筈の旧エタの方が、気の毒なる状態にあるのに不審を感じ、研究してみたいという念を起すに至った。それから数回天部の篤志家竹中半左衛門翁を訪問して、所蔵の古文書を見せてもらい、また同翁経営の夜学校で、該部落の青年児童に対して、一席の講演を試みた事もあった。しかるに今やその竹中翁もこの世におられない。
 大正二年の頃寓居を洛北田中に転じて、田中部落の事情をも見聞するの機会が多かった。その後郷里の部落で、二箇所ばかり講演を試みた事もあった。今にして思うと、これらの講演がいずれも不徹底極まるものであった…

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