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恋と十手と巾着切
こいとじってときんちゃくきり
作品ID54443
著者山中 貞雄
文字遣い新字新仮名
底本 「山中貞雄作品集 全一巻」 実業之日本社
1998(平成10)年10月28日
入力者平川哲生
校正者門田裕志
公開 / 更新2012-11-05 / 2014-11-12
長さの目安約 26 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

恋と十手と巾着切 新興映画 (サイレント)

原作並脚色  阿古三之助
       (山中貞雄)
監督     広瀬五郎
撮影     三木 稔
キャスト
巾着切跡見ず三次   河津清三郎
御用聞てっきり鉄五郎  片桐恒男
茶屋娘 お絹      望月礼子
弟 勝坊        鈴木勝彦
浪人 鵜飼吾郎     吉頂寺光
   (鵜飼三四郎)
相良伝兵衛実は棚倉伝八 東良之助
(相良伝右衛門実は棚倉伝八郎)
[#改ページ]
T「てっきり彼奴と睨んだ眼に狂いのあった試しがない」(O・Lして)
T「御用聞の鉄五郎、人呼んでてっきり鉄」

S=町角(朝まだき)
 御用聞のてっきり鉄、朝の散歩でブラブラやって来て、カメラの前で、立止って声をかける。
T「三次、三次じゃ無えか?」
 呼ばれて振り返った巾着切跡見ず三次。
 二人は仇敵同士だが兄弟の様に仲がいいのである。
 鉄五郎は三次に、
T「近頃決って朝早く出て行くが」
 と言って、ウサン臭そうに、
T「毎朝毎朝一体何処へ行くんだい?」
 と訊かれて三次澄ました顔で、
T「向う横丁のお稲荷様へ朝詣り……」
 「えッ!」と鉄五郎呆れて「お前が?」と言う。
 三次が、「旦那
T「神信心って奴もやって見るとまんざら悪かァ御座んせんね」
 と言って「急ぎやすから御免なせえ」と其の儘スタスタと去る。見送った鉄五郎、変に思ったが、其の儘三次とは反対の方向へ去る。

S=附近
 鉄五郎やって来て立ち止った。
 「待てよ」と考える。
T「てっきり彼奴」
 と独り言、
T「朝ッぱらから一稼ぎしてやがるかも知れ無えぞ」
 其辺で鉄五郎クルッと踵を反して走り去る。

S=稲荷神社境内
 (茶店は腰掛茶屋である。つまり日中だけの営業で、日が暮れたら店を片付けて住居に帰る)
 三次の奴が境内の茶店に腰をかけて嫌に嬉し相にしている。
 茶店の娘のお絹が朝早いので、お客がない鬱晴らしに三次と世間話をしている。

S=附近
 其処へ鉄五郎がやって来る。
 二人の様子に一寸意外に思ったが、その儘二人の傍に来て三次の隣りの床几に腰を下ろす。
 お絹が三次と語らいを止めて茶を汲みに家の中に入る。
 それを見て鉄五郎が三次を見てニヤリと笑った。
 三次一寸テレる。
 鉄五郎が、
T「成る程ね、神信心もまんざら悪かァ無え筈よ」
 と言われて三次真赤になった。もじもじしていたが、耐らなくなったか茶代を置いてそそくさと去る。
 見送った鉄五郎が大笑いだ。
(F・O)
T「年は若いが跡見ず三次」(O・Lして)
T「江戸で名うての巾着切です」

S=町角
 角を曲って三次やって来た。スタスタとカメラの前まで来てハタと立止った。
 行く手で子供の喧嘩だ。一人の子供に五六人の子供がかかっている。
 三次駈け寄って腕白共を追い散らす。
 殴られた子供はシクシク泣き出し…

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