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蘭郁二郎氏の処女作
らんいくじろうしのしょじょさく
副題――「夢鬼」を読みて――
――「むき」をよみて――
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「大倉燁子探偵小説選」 論創社
2011(平成23)年4月30日
初出「読売新聞」1936(昭和11)年12月9日
入力者kompass
校正者門田裕志
公開 / 更新2013-02-06 / 2014-09-16
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)
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本文より


「探偵文学」誌上で発表された時、非常な好評を博した蘭郁二郎氏の「夢鬼」がこの度上梓された。私は早速また繰返して読んだ。いくたび読んでも面白い。
 妖魔の如き美少女葉子と、醜い憂鬱な少年黒吉との曲馬団の楽屋裏における生立から始まり、幼い二人はいつか互に愛しあうようになる。葉子にとっては戯れのようなこの恋も、黒吉にとっては実に命がけのものであったが、やがて移り気な彼女に捨てられる。恋に破れた彼は彼女を遂に殺し、その死体を抱いて飛行機から飛降り心中をするという終端まで一気に読んでしまった。そしてその後もなお妖しき興奮はなかなか冷めなかった。黒吉少年が最も得意とするブランコからブランコに飛びうつる曲芸がある、その空を切って懸命に影を描き得られたのではあるまいか。この点だけでも心霊学に造詣ふかい方だと想像される。「夢鬼」以下五つの短篇を添えてあるが、何れも興味ふかく読んだ。「歪んだ夢」もやはり心霊小説のような気がした。この五篇の中では「魔像」が一番面白かった。



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