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焔の后
ほのおのきさい
作品ID54502
著者末吉 安持
文字遣い新字旧仮名
底本 「沖縄文学全集 第1巻 詩Ⅰ」 国書刊行会
1991(平成3)年6月6日
入力者坂本真一
校正者フクポー
公開 / 更新2018-04-17 / 2018-03-26
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


気も遠く世も消え/\や
丑三つの森の奥の
白檀ほのにくゆり
木薩地しづき頃ほひ。
魑魅が気夢にふれて
孵りし我かの心地。
皐月闇霊気ばしる
夜半の戸に額を垂れて
あゝ堪へ難き胸の狂火。
雛よばふ焼野の雉子の

闇睨む眼か きらに
燃え飛ぶ野火の遠火の
青火魂――あなやの刹那。
魄霊ゆらに揺ぎつ
讃歌咽喉をあふれて
狂ひ心地、小手招き、
いと深き闇のをちに
認め得し小さき焔の后。
五十年のわが歌の世を
上下の永劫に
うるはしくも霊妙く。
不滅の光明の宮の
常虹の御座の上。
われ生命の王者が
斎かれむほのほの后
猛火の天衣左手に
着代をすゝむる情の素振よ。

この時白隼とびて
天の世に拍手打つ音もす
くつがへれ今のこの世
我こそは理想の宮に
ひとり笑む王者なるぞ。
焔そは燃ゆるもの
身の膏しぼるものか。
あゝ好し、后に参る。
焼けても人世の外に活くべし。



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