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未婚婦人
みこんふじん
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「今野大力作品集」 新日本出版社
1995(平成7)年6月30日
初出「旭川新聞」1928(昭和3)年10月21日
入力者坂本真一
校正者雪森
公開 / 更新2015-11-06 / 2015-09-01
長さの目安約 2 ページ(500字/頁で計算)
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本文より




未婚婦人の魅惑に対して私は今日本の未婚婦人へ散文を書送る。



未婚婦人はそが暁近き薔薇色の感情に高揚されて
浪漫主義的な、華やかな悩ましき春宵の恋を夢む
おお恋!
彼女等の夢なる恋!
幻の如く描かれて
現実の白日には霧の如く消ゆる
霧には彩る虹を写すとも
彼女等の勝利は遠く
人生の花園への路傍に
掠め奪わるる夢想の描き手。



私は未婚婦人のみわくに感ずる、
未婚婦人はそが未だ奪われざる真珠を抱く未婚婦人は未だゆかざる途上の人
未婚婦人は純情を愛し、純情の世界を語る未婚婦人は智識を愛し、旋律の中に動く、そして未婚婦人の思想は小市民―小ブルジョア



彼女等の胸にひそめるは性的差別の笞に打たれて、少女パンドラの快想を盗む曲者
彼女卿等が故なき故の刑罰の鞭下を潜りその純情の意識に導かれて階級的抑圧に美しき嵐の如く目覚めよ!



未婚婦人は未だ許さざるの権威者
かつこの未婚婦人は平凡な男へ追従に堕落して
自らの権威を蹂躪せしめ、自らを縛し、あまつさえ彼女卿等の唯一の鍵を渡す



未婚婦人に告げて
卿等の夢を粉砕しようと思わない
『卿等の夢は歴史に永き神経衰弱者としての卿等に与られた魔酔薬の作用である。』
プロレタリアはいう
『卿等未婚婦人は男性への高尚なる極めて自由な玩具である。』



未婚婦人が来るべき世界に投かけて
あえかにも弾でらるる夢は?
自らを畜産場として
自らを滅ぼし男性への不可抗の檻を自らに購い作るを知るや?
そが夢みる楽園は生と死を懸けて
空象意識、クリスト神と契約する天上にはあらずして
永遠に――種落て花咲き実地上の人間の社会にあるを。
記憶せよ!
夢みる未婚婦人は、そが暁に未だ立たざるゆえに。
その純情を愛せられ、みわくとなる。



卿等未婚婦人に告ぐる
革命の炎を青春のその赤き心臓に秘めよ!
卿等未婚婦人は至高の権威を十字に結び正しきわれらが歴史的使命にめざめて血みどろに戦われる
プロレタリアの勝利を助けよ!
しかして至る処、われらが戦線の防塁たれ。

(午前四時薄明の近づく頃)

〔註〕ヴェデキンドの作『春の目ざめ』の中の少女、彼女は性愛を未だ知らず、異性に鞭打たれることを嬉こんだ。


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