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鈍走記
どんそうき
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「竹内浩三全作品集 日本が見えない 全1巻」 藤原書店
2001(平成13)年11月30日
入力者坂本真一
校正者雪森
公開 / 更新2014-12-24 / 2014-11-14
長さの目安約 2 ページ(500字/頁で計算)
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本文より


生まれてきたから、死ぬまで生きてやるのだ。
ただそれだけだ。

   *

日本語は正確に発音しよう。白ければシロイと。

   *

ピリオド、カンマ、クエッションマーク。
でも、妥協はいやだ。

   *

小さな銅像が、蝶々とあそんでいる。彼は、この漁業町の先覚者であった。

   *

四角形、六角形。
そのていたらくをみよ。

   *

バクダンを持って歩いていた。
生活を分数にしていた。

   *

恥をかいて、その上塗りまでしたら、輝きだした。

   *

おれは、機関車の不器用なバク進ぶりが好きだ。

   *

もし、軍人がゴウマンでなかったら、自殺する。

   *

目から鼻へ、知恵がぬけていた。

   *

みんながみんな勝つことをのぞんだので、負けることが余りに余った。それをことごとく拾い集めた奴がいて、ツウ・テン・ジャックの計算のように、プラス・マイナスが逆になった。

   *

××は、×の豪華版である。

   *

××しなくても、××はできる。

   *

哲学は、論理の無用であることの証明に役立つ。

   *

女はバカな奴で、自分と同じ程度の男しか理解できない。しようとしない。

   *

今は、詩人の出るマクではない。ただし、マスク・ドラマなら、その限りにあらず。

   *

「私の純情をもてあそばれたのです」女が言うと、もっともらしく聞こえるが、男が言うと、フヌケダマにみえる。

   *

注釈をしながら生きていたら、注釈すること自身が生活になった。小説家。

   *

批評家に。批評するヒマがあるなら創作してくれ。

   *

子供は、注釈なしで憎い者を憎み、したいことをする。だから、好きだ。

   *

おれはずるい男なので、だれからもずるい男と言われぬよう極力気をくばった。

   *

おれは、人間という宿命みたいなものをかついで鈍走する。すでに、スタアトはきられた。

   *

どちらかが計算をはじめたら、恋愛はおしまいである。計算ぬきで人を愛することのできない奴は、生きる資格がない。

   *

いみじくもこの世に生まれたれば、われいみじくも生きん。生あるかぎり、ひたぶるに鈍走せん。にぶはしりせん。



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