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夜通し風がふいていた
よどおしかぜがふいていた
作品ID54782
著者竹内 浩三
文字遣い新字新仮名
底本 「竹内浩三全作品集 日本が見えない 全1巻」 藤原書店
2001(平成13)年11月30日
入力者坂本真一
校正者雪森
公開 / 更新2015-01-04 / 2014-12-15
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


上衣のボタンもかけずに
厠へつっ走って行った
厠のまん中に
くさったリンゴみたいな電灯が一つ

まっ黒な兵舎の中では
兵隊たちが
あたまから毛布をかむって
夢もみずにねむっているのだ
くらやみの中で
まじめくさった目をみひらいている
やつもいるのだ

東の方が白んできて
細い月がのぼっていた
風に夜どおしみがかれた星は
だんだん小さくなって
光をうしなってゆく

たちどまって空をあおいで
空からなにか来そうな気で
まってたけれども
なんにもくるはずもなかった



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