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融和促進
ゆうわそくしん
作品ID54859
著者喜田 貞吉
文字遣い新字新仮名
底本 「差別の根源を考える」 河出書房新社
2008(平成20)年9月30日
初出「融和資料第一輯」中央融和事業協会、1926(大正15)年1月号
入力者川山隆
校正者門田裕志
公開 / 更新2013-03-25 / 2014-09-16
長さの目安約 70 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 この小冊子はいかにして融和を促進すべきかということを主として説述したもので、いわゆる特殊部落民なるものは、決して普通部落民と筋の違ったものではなく、ただ昔の落伍者のある者が、その択んだ職業によって、当時の社会の迷信と、階級的意識の犠牲となったにほかならぬということを述べたに止どまり、私の特に宣伝したいと思うところの、歴史的の説明にはあまり多く及ぶことができませんでした。よって私はそのうちに、別に「いわゆる特殊部落の由来」とでもいう小冊子を発行してもらって、本書第六章に述べたところをさらに敷衍してみたいと思っております。本書をみて下さった方々は、必ずその書をも読んで下さることを、今から希望しておきます。
大正十四年十二月二十五日
喜田貞吉識
[#改ページ]

1 改善と解放

 融和とは何ぞや。もと別々になっていたものが、すっかり融け合って、まったく一つのものになってしまうことです。融和促進とは何ぞや。その融和を催促して、早く実現せしめようとすることです。わが国には今に至ってなお世間の多くの人々が、ある一部の人々を差別して、あれは特殊部落だ、特殊部落民だなどといって、これを排斥する場合がないでもありません。これがためにその差別される側の人々が、直接間接に受ける有形無形の損害は、実に非常なものでありますが、差別している側の多数の人々は、あまり深くそんなことを考えてみようともしないのです。これはまことに不都合千万な次第で、ただにこれを解放なされました一視同仁の、明治天皇陛下の大御心にそむき奉るものであるのみならず、また同一の権利を与え、同一の義務を負わすところの国法を無視したことであるのみならず、これを広く人道の上からいっても、また国家社会の福利の上から考えても、到底許すべからざる罪悪であると申さねばなりません。
 こんなみやすい道理は、何人にも容易にわかるべきはずであるにかかわらず、今もって世間多数の人々は、それが直接自分の身の上にかかわる事柄でないがために、つい冷淡に見のがしてしまう。各自が深くも考えずに行うところのその差別待遇のことが、その差別される者にとってどんなにひどい苦痛であり、また国家社会の将来にとって、どんなに大きな結果を及ぼすかということをも、考えてみようとしないのであります。もちろん中には、はやくこの点に気がついて、双方の間の融和親善を図ったものも少くはありません。国家の役人達も、もちろんこれを捨てていたものではありません。しかしながら、彼らの行ったところは、主としていわゆる「部落改善」でありました。もちろんこれは当時にとって、もっとも必要な手段でありました。事実上差別される者の多数は、後進部落とまで言われたほどにも一般世間の進歩に後れて、はなはだ気の毒な生活を送っているものが多かったのであります。したがってまずもってこれが改善に尽力し、一般…

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