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ライギット・パズル
ライギット・パズル
原題THE REIGATE PUZZLE
著者
翻訳者大久保 ゆう / 三上 於菟吉
文字遣い新字新仮名
入力者大久保ゆう
校正者
公開 / 更新2012-04-05 / 2014-09-16
長さの目安約 32 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 わが親友シャーロック・ホームズくんは八九年の春、過労のため神経症になったのだが、これはそこから健康を取り戻すより少し前の話である。蘭領スマトラ会社やモーペルチュイ男爵の大計画といった件のあらましは、今も世間の記憶にたいへん新しく、また政治や金融とあまりに密接な関係があるため、この連載の題材には適していない。ところがそれは間接的な形で複雑怪奇な問題へとつながり、犯罪との生涯の戦いで用いる多くの武器のうちでも、ある新しいものの価値を証明する機会をわが友に与えたのだった。
 自分の覚え書きをたぐると、四月の一四日だったことがわかる。その日に私はリヨンから電報を受け取り、ホームズがオテル・デュロンというところで病に伏せっていると知らされた。一日もせず私は友人の病室へと行ったのだが、その症状に危ないところがないとわかってほっとしたのだった。にしても、その鉄の身体でさえもが二ヶ月にわたる捜査の重圧で参っており、その期間は一日の活動が十五時間を下ることが決してなく、当人の話では一度ならず五日間も立て続けに机にしがみついていたことまであったという。その成果がいかに誇らしくとも、それだけ過酷な努力のあとでは反動も避けられまい。欧州じゅうが友人の名に沸き、部屋じゅうが祝電で文字通り足が埋まってしまったときも、見ると友人は黒々とした憂鬱の餌食になっている。その知識にしたところで、三国の警察のしぐじったことも解決し、欧州一の腕を持つ詐欺師のあらゆる裏を掻いたと言えども、当人の神経衰弱を盛り返すには足りなかったのだ。
 三日後にふたりしてベイカー街へ戻ったのだが、友人に転地療養させた方がなおよいのは明らかで、一週間でも春の田舎をとの考えが、私にもきわめて魅力的に思えてきた。私の旧友であるヘイタ大佐は、アフガニスタンで私の治療を受けた男なのだが、当時はサリィ州のライギット近くに館をあがなっており、訪ねてこないかとよく誘いを送ってくれた。最近の話では、友人もついてくるなら喜んで等しく歓迎すると言ってくれていた。いささかの説得が必要だったが、ホームズも向こうが独身であることと最大限の自由が許されることを理解して、ようやく私の企てに同意し、リヨンから帰って一週間後に我々は大佐の館に宿ることとなった。ヘイタは立派な老兵で、世の事々を知っていたので、期待通り自分とホームズに通じるところが多々あるとすぐに悟ったようだった。
 着いた日の晩、我々は夕食後に大佐の銃器室で腰を落ち着けていた。ホームズはソファに身を投げ出し、ヘイタと私とは火器に着いた小さな徽章をながめていた。
「時に。」と出し抜けに大佐は切り出した。「この辺の拳銃を一丁、上の自室へ持ってった方が良さそうだ、危険を感じたときのためにな。」
「危険!」と私。
「そうとも。近頃ここいらの者はみなおびえておってな。アクトンのご老公はこの州の大…

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