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ベートーヴェンの生涯
ベートーヴェンのしょうがい
副題07 ベートーヴェンの『手記』より(訳者抄)
07 ベートーヴェンの『しゅき』より(やくしゃしょう)
著者
翻訳者片山 敏彦
文字遣い新字新仮名
底本 「ベートーヴェンの生涯」 岩波文庫、岩波書店
1938(昭和13)年11月15日
入力者門田裕志
校正者仙酔ゑびす
公開 / 更新2012-05-26 / 2014-09-16
長さの目安約 5 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

『田園交響曲』は絵画的な描写ではない。田園での喜びが人の心に惹き起こすいろいろな感じの表現であり、それに付随して田園生活の幾つかの感情が描かれている。(一八〇八年)

      *

 東は朝。――西は夕べ。――南は真昼。――北は真夜中。(一八一三年)

      *

 現在のような日常生活をもうこれ以上つづけないことだ! 芸術もまたこの犠牲を要求しているのだ。気ばらしによって休息するのはいっそう力づよく芸術の仕事に努めるためでなければならない。(一八一四年)

      *

 ヘンデルとバッハとグルックとモーツァルトとハイドンの肖像を私は自分の部屋に置いている。それらは私の忍耐力を強めてくれる。(一八一五年)

      *

 田園にいれば私の不幸な聴覚も私をいじめない。そこでは一つ一つの樹木が私に向かって「神聖だ、神聖だ」と語りかけるようではないか? 森の中の歓喜の恍惚! だれがこれらすべてのことを表現し得ようぞ?……(一八一五年)

      *

 神は非物質である。それ故神は一切の概念を超えている。神は不可見であるから形を持つことがないが、しかし神のさまざまな作品からわれわれが認知するところよりして、われわれは結論する――神は永遠であり全能であり全智であり遍在であると。一切の欲望から解脱しているが故に真に強いものはただ彼だけである。……強き彼は、空間の各部分に現在している。……おお、神よ、おんみはあらゆる時と所との真実なる、永久に浄福なる、不変なる光である。おんみの叡智は無数の法則を認めつつ、しかもおんみの行為は常に自由であり、おんみの行為の結果はつねにおんみ自身の栄光となる。……おんみに一切の讃美と恭敬とが捧げられよ! おんみのみが真の浄福者 Bhagavan である。一切の法則の実体、一切の叡智の姿であるおんみは全宇宙に現在して一切事物を保っている。(一八一五年)

      *

 神からは一切が清らかに流出する。私が幾度か情念のため悪へ混迷したとき、悔悟と清祓を繰り返し行なうことによって私は、最初の、崇高な、清澄な源泉へ還った。――そして、「芸術」へ還った。そうなると、どんな利己欲も心を動かしはしなかった。常にそうあってくれるといい。樹々は果実の重みにたわみ、雲はさわやかな雨に充ちるときに沈降する。人類の善行者たちも自分の豊かな力に傲りはしない。もしも重い〔(ライツマン版では「美しい」となっており、ロマン・ロランの最近の研究書(一九三八年)中の引用文では「重い」となっている――訳者)〕睫毛の下に涙が膨らみ溜るならば、それが溢れ出ないように、つよい勇気をもってこらえよ。通る径があるいは高くなりあるいは低くなり、正しい道の見究めがたいこの世のお前の旅路において、お前の足跡は確かに坦々たるものではないであろうが、しかし徳の力は、…

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