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断腸亭日乗
だんちょうていにちじょう
副題05 断膓亭日記巻之四大正九年歳次庚申
05 だんちょうていにっきまきのしたいしょうくねんさいじかのえさる
著者
文字遣い新字旧仮名
底本 「荷風全集 第二十一巻」 岩波書店
1993(平成5)年6月25日
入力者米田
校正者小林繁雄
公開 / 更新2013-05-12 / 2014-09-16
長さの目安約 26 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

荷風年四十有二

正月元旦。間適の余生暦日なきこと山中に在るが如し。午後鷲津牧師来訪。この日風なく近年稀なる好き正月なり。されど年賀に行くべき処なければ、自炊の夕餉を終りて直に寝に就く。
正月二日。快晴和暖昨日の如し。
正月三日。快晴。市中電車雑[#挿絵]甚しく容易に乗るべからず。歩みて芝愛宕下西洋家具店に至る。麻布の家工事竣成の暁は西洋風に生活したき計画なればなり。日本風の夜具蒲団は朝夕出し入れの際手数多く、煩累に堪えず。
正月六日。春陽堂主人和田氏年賀に来る。夜唖[#挿絵]子と電車通の宮川に飲む。
正月七日。夜、微雨あり。アナトオル・フランスの L'Anneau d'Amethyste を読む。
正月八日。寒気稍寛なり。大工銀次郎を伴ひ麻布普請場に徃く。
正月九日。晴天。全集第四巻の原稿を春陽堂に送る。この日より再び四谷のお房を召使ふことにす。
正月十日。晴天。アンノオ、ダメチストを読む。篇中の主人公迷犬を書斎につれ来りて打興ずるあたり最面白し。七年前大久保の旧宅改築の際、一頭の牝犬、余が書斎の縁側に上り来りて追へども去らず、已むことを得ず玉と名づけて其儘飼置きし事など思起しぬ。それより家畜小鳥などにつきての追憶を書かばやと想ひを凝らす。
正月十一日。晴れてあたゝかなり。
正月十二日。曇天。午後野圃子来訪。夕餉の後忽然悪寒を覚え寝につく。目下流行の感冒に染みしなるべし。
正月十三日。体温四十度に昇る。
正月十四日。お房の姉おさくといへるもの、元櫓下の妓にて、今は四谷警察署長何某の世話になり、四谷にて妓家を営める由。泊りがけにて来り余の病を看護す。
正月十五日。大石君診察に来ること朝夕二回に及ぶ。
正月十六日。熱去らず。昏々として眠を貪る。
正月十七日。大石君来診。
正月十八日。渇を覚ること甚し。頻に黄橙を食ふ。
正月十九日。病床万一の事を慮りて遺書をしたゝむ。
正月二十日。病况依然たり。
正月廿一日。大石君又来診。最早気遣ふに及ばずといふ。
正月廿二日。悪熱次第に去る。目下流行の風邪に罹るもの多く死する由。余は不思議にもありてかひなき命を取り留めたり。
正月廿五日。母上余の病軽からざるを知り見舞に来らる。
正月廿六日。病床フロオベルの尺牘を読む。
正月廿七日。久米秀治来訪。
正月廿八日。褥中全集第四巻校正摺を見る。
正月廿九日。改造社原稿を催促する事頗急なり。
正月三十日。大工銀次郎来談。
正月卅一日。病後衰弱甚しく未起つ能はず。卻て書巻に親しむ。
二月朔。臥病。記すべき事なし。
二月二日。臥病。
二月三日。大石君来診。
二月四日。病床フオガツアロの作マロンブラを読む。
二月六日。唖[#挿絵]子来つて病を問はる。
二月七日。寒気甚し。玄文社合評会の由。
二月九日。病床に在りておかめ笹続篇の稿を起す。此の小説は一昨年花月の廃刊と共に筆を断ちしまゝ今日に至り…

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