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昆布とろの吸い物
こんぶとろのすいもの
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「魯山人味道」 中公文庫、中央公論社
1980(昭和55)年4月10日
入力者門田裕志
校正者仙酔ゑびす
公開 / 更新2012-11-06 / 2014-09-16
長さの目安約 2 ページ(500字/頁で計算)
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本文より


 関西では「昆布とろの椀」で通ずるようになっているので、ここではそうしておこう。これくらい簡単で、明瞭な美味さを感ずるものは、ほかに類がないかも知れない。
 関西人はことに昆布を食いつけているので味が分り、充分に賞味できることから、多くの人が賞味しているようである。ただここでは昆布がよくないといけないのであって、東京では昆布をあまり知らないところから、とろろ昆布、もずくがあるけれども、粗末にするものが多い。いい昆布で、削って肉のないようなのがよいのだが、東京では特殊店に行かないとない。しかし、関西では自由に手に入る。上等品は白く、やわらかく、ふうわりとしていて、真っ白く削られたものがよろしい。日常の惣菜には黒いのでも美味いには美味いが、品がわるい。
 なんにしても昆布だけの吸いものだから、昆布を中心にして、昆布の選択をするほど効果がある。また昆布の吸いものゆえに、そのだしはかつおぶしだけでよろしい。かつおぶしと言ってもよしあしがあるから、かつおぶし屋に行って、よく乾燥して高いものを買ったらよい。それだけで立派な吸いものができる。
 ここでも薄口醤油を是非とも使って欲しい。東京のものより半額ほど安いのだから、手に入れて欲しいものである。
 さて昆布とろをぞんざいにやる時だったら、椀の中にとろろ昆布を入れ、化学調味料でも少し入れ、醤油を加え、それに熱湯をさすだけでできるのであるが、それでは荒っぽいぞんざいな間に合わせ仕事で、料理らしく上等にするには、是非かつおぶしのだしを取り、それに薄口醤油を入れ、ふつうの汁よりちょっと水っぽくして、それを椀の中のとろろ昆布の上から注げばよろしい。ただし、それには条件がある。この中にねぎの微塵に刻んだのを入れるのと入れないのとでは、味が非常に違うということである。入れないと、なんだか物足りなくて、味の上に大いなる劣りがある。今までねぎを入れてやったことのない方があったら、是非お試し願いたいものである。
(昭和八年)



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