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料理の秘訣
りょうりのひけつ
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「魯山人味道」 中公文庫、中央公論社
1980(昭和55)年4月10日
入力者門田裕志
校正者仙酔ゑびす
公開 / 更新2013-07-22 / 2014-09-16
長さの目安約 7 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 美味い料理を拵える秘訣――
 美味いものを食う秘訣――
 この秘訣を知ることが一番大事なことだ。その秘訣というのは、言ってしまえば手品の種といっしょで、別段なんでもないことだ。つまり、なあんだと言うようなもんだが、それはたびたび申すように、よい材料を用いること、選ぶことだ。大方の人は、大概そんなことだろうと思ってた、と言うだろう。しかし、何事も早合点は軽薄とかあわてものというものだ。まず落ちついて教育することを考えて欲しいと言いたい。
 料理の材料が悪くては一人前の美味い料理とはならない。骨ばかり折れて世話甲斐のない結果しか残らない。労して功なしである。
 ところで、料理の不味い理由は、大概料理人の材料を選択する際の不明、不注意からくる。選択の道を誤っているか、もしくは良否の判別が出来得ない未熟からだ。
 よい材料を得ても、生かして用い得ず、わざわざ本質を殺してしまっているものもある。これはまた賢児を得ながら、教育し善導する道を知らないのと同じである。
 みなさんは、いつの場合でも料理の補助味、すなわち、かつおぶしの良否を眼で見て判るだろうか。だし昆布の鑑別ができるだろうか。なんのかのと料理を語る人はあっても、大概この第一歩の答えすら自信を有する者は稀なようだ。
 味噌の良否、醤油の良否と種類別、酢のよしあしと色別、香り別、油、塩、砂糖、日頃こういうものを吟味してかかっているか。
 こんな話は面白くないなあ、と言うのでは、料理の向上を心掛けることは無理だッ――と私は突放す。
 知人の多くは、私に高級料理についてよく聞くけれど、その人々は、まずかつおぶしが薄くきれいに削れる鉋を持たない。持ってはいても、削り方を知らずにやっている。醤油、酢、油など、料理の上に重要な役目をするものにきびしく注意を払っていない。みな出鱈目だ。昆布だしの取り方はもちろん、煮だしの取り方を知らない。だから、用いる分量なども当てずっ法だ。これで料理経済を語るなどは噴飯ものである。
 毎朝の味噌汁の拵え方まで、年中、無茶苦茶をやってそれでなんとも思っていない。
 そのくせ、からすみは長崎にかぎるの、このわたはどうだのと、臆面もなしに生意気を言う。こんな軽薄な輩では、男にせよ女にせよ、料理の向上なんぞ願っても叶えられない。
 元来「料理」とは、理を料るということなのだ。「ものの道理を料る」意であって、割烹を指すのではない。
 日本料理屋、西洋料理屋というふうに食物屋と呼ぶけれど、意味をなしていない。料理という字は、割烹のように、煮るとか割くとかいう意味を含んではいない。「料理」すなわち、理を料る、理を考えるのは、とりも直さず、割烹の内容を指すのであろう。料理は国を料理するでもいい、人間を料理するでもいい。だから、割烹店の場合は、さかなを料理する、蔬菜を料理するの意が当てはまる。
 要するに…

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