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無機物地帯
むきぶつちたい
作品ID55039
著者仲村 渠
文字遣い新字旧仮名
底本 「沖縄文学全集 第1巻 詩Ⅰ」 国書刊行会
1991(平成3)年6月6日
入力者坂本真一
校正者良本典代
公開 / 更新2017-12-04 / 2017-11-24
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


鉄橋を渡れば展けてゆく膨大な地帯。
海を埋めて
粗野な街をひろげてゆく健康な三角洲を
けなげな犯罪が花畑のやうに美しいほとりを
堀割の麗しい濁流に沿ひて
鮮な溺死体を迎へ
涼しい肥料船へあひさつをかはし
ゆくてには水沫をあげる浚渫船の耀ける筋肉
また、たえまなく僕らの眼に錯綜する鉄線路の鮮明な東西南北
雪をかむつてくる貨物列車
またもや前進してくる鉄材運搬車のたのしい地ひびきを越え
はるか海岸線を飾つてゐる貨物船の美しい無表情よ。
いろんな人種を持つて
海をおひやつて広がるこの地帯のなかを
ぼくの恋びと!
この売春婦はつよい股で渉つてゆくのである。
その心臓は美しい無機物なのである。



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