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チャンプルー
チャンプルー
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「山之口貘詩文集」 講談社文芸文庫、講談社
1999(平成11)年5月10日
初出「食生活」1956(昭和31)年10月号
入力者kompass
校正者門田裕志
公開 / 更新2014-02-17 / 2014-09-16
長さの目安約 6 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 このごろの泡盛屋では、琉球料理を食べさせるようになったので琉球出身のぼくなどにとっては何よりである。戦前の泡盛屋では、泡盛だけが琉球で、つまみものなどはほかの飯屋と変わらなかったが、いまは簡単な琉球料理があって、琉球的な雰囲気が濃厚である。
 こころみに、ある泡盛屋ののれんをくぐると、ミミガーとか、アシティビチとかチャンプルーとかいうのが、眼につくわけである。むろん初めての客には、見当のつかない料理名なのである。折角、泡盛をついでもらっても、さて、つまみものとなると、さっぱりわからないので、結局、「ミミガーってのはなんだい」ときいてみるより外には手がないのである。

 ミミガーは、一般家庭ではあまり食べなかった。沖縄では辻町の料理屋あたりでは、酒の肴としていつでも食べられたのである。ミミガーは、一口に云えば豚の耳の料理である。食べたことのない人は、耳ときいただけで、そっぽを向いたりするものもあるが、まず、食べてみることが肝心なのである。
 その証こには、ミミガーを食べさせる泡盛屋に来て、それを食べないものは、まずないといってもよいからなのである。よくゆでた耳を、うすくきざんで、大根おろしといっしょに三杯酢にしたものである。こりこりして、なかなかさっぱりしたものである。

 アシティビチというのは、豚の足の料理である。云わば、足の吸物である。これは一般の家庭でも適当に食膳にのぼってくる料理である。しかし、それらのものよりも、もっと一般的な生活に即した料理としては、なんと云ってもチャンプルーである。
 普通、油いためしたものをチャンプルーと云うのである。その種類には、ゴーヤー(れいし)チャンプルーがあり、ビラ(ねぎ)小チャンプルー、マーミナ(もやし)チャンプルー、チリビラー(にら)チャンプルーなどがある。それらは野菜である。外にトーフ(豆腐)チャンプルーがある。しかし、どのチャンプルーの場合でも、大ていトーフはいっしょである。
 チャンプルーは、その材料が日常の手近にあるものばかりであり、作り方も非常に簡単で、その場で誰にでも出来るもので、単純素朴のあっさりとした味がよいのである。
 これは、豚の油を、野菜いためにする程度の量を鍋にたらし、それが焼けたころ、豆腐を適当の大きさに千切って入れ、もやしを入れていっしょにいため、塩で味つけするだけのことである。ねぎやにらの場合は寸位に切るか、あるいは、こまかくきざむ。ぼくの好みから云えば、れいしのチャンプルーの味は格別で、あのほろにがい味は忘れ難い。

 れいしは、あちらこちらの家でも、わざわざ棚をかいてつくっていたが、ぼくの家でも、毎年夏になると、父がれいしの棚をつくって、そこにぶらさがったのをもぎっては、チャンプルーにしたものである。沖縄では、赤くなったれいしは食べない。青いうちに、チャンプルーにして食べるか、あ…

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