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まちむすめ
まちむすめ
著者
文字遣い旧字旧仮名
底本 「上田敏詩集」 玄文社詩歌部
1923(大正12)年1月10日
入力者川山隆
校正者岡村和彦
公開 / 更新2013-04-01 / 2014-09-16
長さの目安約 2 ページ(500字/頁で計算)
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本文より


かなしき契となりてけり
さめてうれたき夢のあと
きはみて落つるいてふ葉の
あしたの霜にうづむごと
あゝわが戀はきゆべしや

月はしづみてほしかげの
きらめくよひの浴歸りに
霜夜の下駄のおとかぞへ
別れしひとのおもかげを
おもひきたればときの鐘

鐘にうらみはむかしより
こひするひとの情なれど
かねをうらむも世の中に
ひとめの關のあればなり
げにつれなきは義理の道

さはいへ空の高みくら
此世の末のさばきにて
善惡さだめたまふとき
をとこをんなが一生の
切なる戀はいづれぞや

戀よなさけよひとの世に
かばかり猛きものあらず
かばかり續くものあらず
靜はのこる星月夜
鎌倉山は春のくさ

心はみづの姿なき
涸れ乾きたる物識よ
われも學びの宮に入り
その高欄のゑをあふぎ
其きざはしの花をつみ

昔のうたの意をひろひ
いまはた絶えぬ藝術の
光をめには見たれども
戀はくせ者いつのまに
情けの征矢を放ちけむ

別れのうさは物がたり
こひのくるしき樂みは
歌の言葉のあやとこそ
思ひしわれもこの秋の
傾くなべにかつしりぬ

學びは荒みたならしの
琴の聲さへものうきに
いかでやきかむ諫の言
親しきひとよわが友よ[#「わが友よ」は底本では「わか友よ」]
黒髮のちから誰かしる

すこしちゞれし前髮に
くしさへすてしやさ姿
巴里の都のかきつばた
ぐりぜつとをぞ忍ばるる
あだといきとのまち娘

かたこそちがへ盃の
色こそ變れうま酒の
西と東とへだゝれど
人の心にけぢめなし
とは吾今ぞ明らめし

夕日かぐろひ西雲は
なまりの如く紅葉の
色あせ黒む別れには
えがたき家の寶をぞ
毀ち破りし心地せる

樂しきひびの戯れに
惜しき機をや失ひし
悲しき今の別れにて
かくまで深き思かと
曉ればのぞむ戀の淵

夢にも似たる命よと
僧も詩人もかこち顏
吾果いはむ波の穗の
花にうまれし神の道
墓無き夢の夢なりと

大路のそらの電線に
夕闇おちてはた暗き
逢魔がときの蝙蝠の
軒を掠めて狂ふなる
苦しき戀もするものか

蓮葉しづみふゆ波の
龍紋小紋織りみだす
池の水とり夜を寒み
寢れぬまゝに妻鳥の
翅の温みを慕ふごと

われはなんぢを慕ふなり
みだれいててふの町むすめ
かへれかなしきわが戀よ
あひびき橋のらんかんに
月をあかしの夜をしらば



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