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天の狼
てんのおおかみ
著者
文字遣い新字旧仮名
底本 「現代日本文學大系 95 現代句集」 筑摩書房
1973(昭和48)年9月25日
入力者kompass
校正者noriko saito
公開 / 更新2016-07-14 / 2016-06-10
長さの目安約 9 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

天の狼





爛々と虎の眼に降る落葉
冬日呆 虎陽炎の虎となる
凝然と豹の眼に枯れし蔓
日に憤怒る黒豹くろき爪を研ぎ
馬馳ける冬まんだらの雲の影
寒雷や一匹の魚天を搏ち
からたちの冬天蒼く亀裂せり



枯葦の月の罅けゆく影ばかり
海昏るる黄金の魚を雲にのせ
草原のたてがみいろの昏れにけり
火口湖は日のぽつねんとみづすまし
海峡を越えんと紅きものうごく
ひた/\と肺より蒼き蝶の翅
蜂の巣に蜜のあふれる日のおもたさ

明暗

早春の鶴の背にある光の輪
鉄の門の錆びたれば山脈青かりき
木々の芽のしづかなるかな蒼空の音
むらさきの花咲きてより※[#「さんずい+雫」、226-中-14]せり
もくせいの夜はうつくしきもの睡る
この宵のおぼろなるもの頬にあり
かん/\と鐘なるときの花の澪



影はただ白き鹹湖の候鳥

夜景

灯を消してあゝ水銀のおもたさよ

無音

絶壁のわん/\と鳴るとき碧落
地の果の風の涯なる炎の櫟
落日のしづかにうごく雲の鰭



冬がくる火を噴く山は火を噴かしめ
雪ふれば雪のしづかにふる裸
冬天に牡丹のやうなひとの舌
瞳に古典紺々とふる牡丹雪
冬薔薇神をおそれぬ瞳よ唇

季節

屋根々々はをとこをみなと棲む三日月
木枯のひとは奈落に灯を抱き
雪をきく瞳にくれなゐの葩を灯し
雪晴れのひたすらあふれたり微笑
冬日閑々とおもきみどりの油垂れ

結氷期

冬天の黒い金魚に富士とほく
冬蝶のひそかにきいた雪崩の響
蝶墜ちて大音響の結氷期
風雪の火焔めら/\はしる雉
風すさぶ夜は孤島と目を醒むる

冬日記

鳥のゐて木々明暗に跫もなし
鳥うせて烟のごとく木の枯るる
冬の川キンキンたればふところで
雪つもる夜は深海の魚となる
夕風の馬も女も風の中
牡蠣うまし大焼雲を眉間にし
妻は湯にわれには濃ゆき冬夕焼

灰鳥

藻を焚けば烈しき鳥は海へ墜つ
火を焚いてつんざくものの跫をきく
リンリンと冬 灰鳥の張るつばさ
冬波に向へばあつきわがめがしら
冬波に背けば炎き常陸山脈

夜の歌

月のふる夜は木の葉の翳に棲む
雨けむる夜は花弁と閉ぢてあり
花のちる夜はけだものと地を嗅ぐ

秋炎

雲の水掬めば凛烈たる季節
葦枯れて山脈キシキシとあとすざる
秋の鶏馳ければへらへらと白焔
ゆく雲はくろい運河の秋の雲
一本のマツチをすれば湖は霧


阿呆の大地



春日記

椿散るあゝなまぬるき昼の火事
空想の水平線の花雌蘂
花粉の日 鳥は乳房をもたざりき
花粉とぶ倫理は水とながれたり
葩散りて赤い傷ふくわが季節
春睡はしろき花粉をみなぎらし
日溢れ腹のおもたい魚およぐ
窓あけて虻を追ひ出す野のうねり
チユウリツプこの日五月の日傘をさす
風光る蝶の真昼の技巧なり
わが日記尺取虫は壁を匍ふ

陽炎

炎天に蒼い氷河のある向日葵
鶏交り太陽泥をしたゝらし
陽炎はぬら/\ひ…

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