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光る生物
ひかるせいぶつ
著者
文字遣い旧字旧仮名
底本 「光る生物」 自然科學叢書、越山堂
1923(大正12)年3月6日
初出「九州日報」1919(大正8)年4月16日~19日
入力者岩澤秀紀
校正者米田
公開 / 更新2014-05-03 / 2014-09-16
長さの目安約 15 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

一 序言

 光る生物と言へば又、例の『不知火』の話だと早合點をする人があるかも知れない。しかし所謂『不知火』の話は、あとで精しく書く。こゝでは已に學者及び世人に知られてる動植物のことを書いてみたいと思ふ。
 と言ふのはこれから夏になれば、山か海に出掛ける人々が多くなる。それで夜中の散歩に、人魂、狐火、さては鬼火等に出會ふ人があるかも分らない。もしあつたら一つ度胸を据へて、冷靜に觀察してもらいたい。さうすれば案外な火の正體が發見されて、さしも不思議な『怪火』も、極めて平凡なものだといふことが分るだらうと思ふ。だからその案内のために私は、光る生物の話をかいてみたい。
 所が次下に記す光る生物の中で、私の知つてる動物は極めて少い。陸の動物では先づ螢、海の動物では一二の原生動物、水母、きいとぷてらす、海螢、蝦、螢烏賊、裸鰯位なものだ。それ以外の動植物は總て、色々な文献から請賣する。
 その文献の中で最も該博を極めたのは、流石に獨逸のマンゴールド(一九一〇)の書いたものだ。その中には六百四十九の文献が列べてある。それから又佛蘭西のデユボアー(一九一四)の書いた本がある。デユボアーは動物發光物質の獨創的研究者として第一人者だ。米國のハァヴエー(一九二〇)も本を書いてゐる。これにも二百九十九の文献が引合に出てゐる。しかしマンゴールドからの借物が大分あるらしい。

二 光る植物

(一)光る藻類 先づ光る植物から始める。光る植物は餘り多くない。最も原始的のものでは藻類に青緑藻[#「青緑藻」は底本では「青縁藻」]、緑藻[#「緑藻」は底本では「縁藻」]、褐藻、赤藻の四種があるさうだ。序に言つて置きたいのは、植物學者の所謂『光る藻』だ。その名で考へてみれば、藻が發光するやうだが、あれは全く發光するのでない。その球状の細胞が光を反射するのだ。だから全く『光る藻』でない。實は反射藻だ。しかもそれが何時でも反射するといふ譯でなくて、全く反射しない時があるから面白い。
 それから又學者の報告も當にならないことが隨分ある。海の藻類にも光る藻類があるとされてゐた。これも藻類そのものが光るのでない。藻類に附ついてる『ひどら』類、或は原生動物が光つてるのだといふことが分つた。
(二)光る菌類    この菌類の中にはバクテリア等も當然入れなければならない。しかしバクテリアは主に海に關係があるから後廻しにしたい(淡水には光るバクテリアはゐない)。光る菌類には黴類、黒穗菌類、木耳類、ひらたけ類、菌絲類、惡臭菌類等があつて、世界各國を通じて確かに知れてるのは約二十四五種らしい。多分木曾山中の發光菌も矢張り、この種類のものだつたと私は記憶する これ等の發光菌が確定されるまでには、隨分時間もかゝれば、學者も頭を惱ましたやうだ。
 兎に角朽木や菌類の發光(少くとも記録に殘つてゐるのは)を初めて觀察したのは、…

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