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警戒
けいかい
作品ID55472
副題C・Mに
シー・エムに
著者富永 太郎
文字遣い新字旧仮名
底本 「富永太郎詩集」 現代詩文庫、思潮社
1975(昭和50)年7月10日
入力者村松洋一
校正者川山隆
公開 / 更新2014-03-29 / 2014-09-16
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


 酔ひ痴れて、母君の知り給はぬ女の胸にあるとき、「*ここにわが働かざりし双手あり」の句を君の耳もとにさゝやき、卒然と君の眼の中に、母君の白き髪と額の皺とを呼び入れるものは何であるか。心せよ、これこそ、世界の構成の最下層から突き出でて、君の心臓の内壁にまで達する、かのへらへらとした気味あしき触手の、節奏なき運動の効果なのである。人はこの触手の存在に気付くことがあまりに少なく、しかもそれのために「ちよろりとやられてしまふ」ことがあまりに多いのである。されば友よ、(君は尊敬すべき生活の殉教者だ)、まづ空間を横ぎるこれらの黒い線條の存在に注意しよう。そして、卑しむに堪へたるかれらの機能に対して、心からの敵意を以て警戒しようではないか。
* Voici mes mains qui n'ont pas travaill[#挿絵]―― Verlaine, Sagess e,[#挿絵], 1.



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