えあ草紙・青空図書館 - 作品カード


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無題
むだい
著者
文字遣い新字旧仮名
底本 「富永太郎詩集」 現代詩文庫、思潮社
1975(昭和50)年7月10日
入力者村松洋一
校正者川山隆
公開 / 更新2014-04-19 / 2014-09-16
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)
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本文より


月青く人影なきこの深夜
家々の閨をかいま見つゝ
白き巷を疾くよぎる侏儒の影あり

愚かなる状して黒々と立てる屋根の下に
臥所ありて人はいぎたなく眠れり
家々はかく遠く連なりたれど
眠の罪たるを知るもの絶えてあらず

月も今宵その青き光を恥ぢず
快楽を欲する人間の流す
いつはりの涙に媚ぶと見えたり

かゝる安逸の領ずる夜なれば
あらんかぎりの男女の肌を見んとて
魔性の侏儒は心たのしみ
おもはゆげもなく軒より軒へ
白き巷をよぎりゆくなり



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