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俳句とはどんなものか
はいくとはどんなものか
作品ID55509
著者高浜 虚子
文字遣い新字新仮名
底本 「俳句とはどんなものか」 角川文庫、角川学芸出版
2009(平成21)年 11月25日
初出「ホトトギス」1927(大正2)年5~10月号
入力者kompass
校正者仙酔ゑびす
公開 / 更新2014-04-12 / 2014-09-16
長さの目安約 104 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

[#ページの左右中央]


この小講義は雑誌ホトトギス紙上(大正二年五月号以下)に「六ヶ月間俳句講義」として連載したものであります。一篇の主旨が俳句とはどんなものか、ということを説明するにあるのでありますから、今一冊子にまとめるに当たって、その通りに標題を改めました。


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[#ページの左右中央]


緒言


 近頃初めて俳句を作ろうと思うのだがどういうふうに作ったらよかろうか、とか、これから俳句に指を染めてみたいと思うのだがどんなふうに学んだらよいのか、とか、その他これに類した質問を受けることが多うございます。ことに、ずっと程度を低くした小学生に教えるくらいの程度の俳話をしてもらいたいというような注文をなさる方があります。この俳句講義は今度それらの要求に応ぜんがために思い立ったものであります。


[#改ページ]

第一章 総論


 この事ではまだ俳句というものを少しも知らぬ人のために、概念だけを与えるのを目的としてのべます。元来この講義は初心の人に俳句の概念を与えるのを目的とするのではありますが、この総論においてはさらにそれを小規模にして、手っとり早く、俳句というものに多少の親しみをつけるだけのことを目的とします。それゆえ同じく初心といううちでも一、二冊俳書を読んだことがあるとか、二、三句作ってみたことがあるとかいう人にはあまりわかりきったお話になるかもしれないのであります。それらの人は第二章から読んで下さってよいのであります。
 それゆえこの一章を読んでから、今まではまったく没交渉であった俳句というものにどこやら一つの暖かみを覚えるようになったとお感じになるならば、それだけでもう十分この章の目的は達せられたことになるのであります。いよいよ諸君が俳句を作られるための手引としては第二章以下にのべることにいたします。
 さて俳句(発句)というものはどんなものでしょう。
 それについて私はまず自分がまったく俳句というものを知らなかった幼い時の記憶を呼び起さなければなりません。私の父や母は好んで三十一文字を並べておりました。父の写本には歌の本が多うございました。来生以前から耳に慣らされていた謡曲の中にも歌はたくさん織りこまれていました。母が私にして聞かすお伽噺の中にも歌はよく引合にでました。そのうちには七つ八つの子供が歌を読み合って問答するような話もありました。
 それは一人の子供が日暮になってほかの子供を誘いに行くと、もうその戸が締まっていて開かない。そこで「とんとんと叩く妻戸を開けもせず……」という歌を読んでなじると、中の子供はまた「……母の添乳に……」どうとかこうとかいう歌を読んで返報をするというような話でありました。
 そんなわけで和歌は生まれ落ちてから私にとって親しいものでありましたが、発句については十三、四ごろまでただ一言の話を聞い…

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