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姉へ
あねへ
作品ID55552
著者今野 大力
文字遣い新字新仮名
底本 「今野大力作品集」 新日本出版社
1995(平成7)年6月30日
入力者坂本真一
校正者雪森
公開 / 更新2015-01-10 / 2015-01-06
長さの目安約 2 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


蒔付時に子を生んで
あせって起きて働いて
足腰立たなくなったという
姉よ 何たる不幸ぞや

病気をした時
神主に拝んでもらって
紙っ切れを水でのまされて
それでなおらば、
お安いけれど
去年□死んだ妹を
姉よまさかに忘れまい

あの妹が死んだ時
足は青んぶくれ
顔はまんまるお盆のよう
眼が見えなくなったきり、
最後には
わけのわからぬあれこれを
大声でわめいたっけ
あのおとなしかった妹が

いまも耳元にのこる
最後のあの声 死んだ妹の言葉、
プロレタリアだの
キョウサントウだの
ロシアだの
あれはどこかでおぼえていたのを
うらみのように
どなって死んだ、

不幸はおいらに
ぜいたくはあいつら地主に
東郷大将が三十五万円のラジウムとか
使って死んだという
十銭の薬も買えず
木の根 草の葉、
又は正真正銘の紙切れのんで
死んでく人間の
何とこの頃多いことよ、
死んだりするのが運命ではない
死ぬのは大方金がない為、
貧乏なため
働いても働いても
生活に余裕が出来ないため
どこかに大きな穴があって
そこでうじゃうじゃと
したい放題やって
百姓の生血しぼっているため

死んじゃだめだよ
生きねばならん
生きて恨みを晴らさにゃならん
ロシアのようによい世の中に
作りかえねばならんのだ



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