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測量船拾遺
そくりょうせんしゅうい
著者
文字遣い新字旧仮名
底本 「測量船」 講談社文芸文庫、講談社
1996(平成8)年9月10日
入力者kompass
校正者門田裕志
公開 / 更新2015-02-02 / 2015-01-27
長さの目安約 38 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

玻璃盤の胎児



生れないのに死んでしまつた
玻璃盤の胎児は
酒精のとばりの中に
昼もなほ昏々と睡る

昼もなほ昏々と睡る
やるせない胎児の睡眠は
酒精の銀の夢に
どんよりと曇る亜剌比亜数字の3だ

生れないのに死んでしまつた
胎児よお前の瞑想は
今日もなほ玻璃を破らず
青白い花の形に咲いてゐる
[#改ページ]

祖母



祖母は蛍をかきあつめて
桃の実のやうに合せた掌の中から
沢山な蛍をくれるのだ

祖母は月光をかきあつめて
桃の実のやうに合せた掌の中から
沢山な月光をくれるのだ
[#改ページ]

短唱



木の枝に卵らみのり
日に日にゆたかにみのり
いつしかに心ふるへて
しらじらと命そだちて
木の枝に卵らみのる
[#改ページ]





魚の腹は
白ければ光り
魚の腹は
たそがれかけてふくらむ

魚のこゑ
ちいちいと空にきこえ
光れる腹をひるがへす

雲間に魚の産卵をはり
魚はうれしや
たらたら たらたら
風鈴のやうに降りてくる
[#改ページ]

王に別るる伶人のうた



空に舞ひ
舞ひのぼり
噴水はなげきかなしみ
ひとびと
うなじたれ花をしくなり

哀傷の日なたに
花はちり
花はちり
見たまへかし
王がいでましのすがたなり

風に更紗のかけぎぬふかせ
ゆるやかに象があゆめば
み座ゆれ
ゆれ光り
金銀の鈴がなるなり

象の鼻
をりふしに空にあげられ
のびちぢみ
楽しげに
楽しげにみゆきするなり

しづしづと
撥橋はおろされ
枢なりきしみ
ひとびと
うつつなる眼をぬぐふなり

かくて
日は昃り
日は沈み
影青く丘を越えゆく
王がいでましのすがたなり

いやはての
いやはての
王がいでましのすがたなり
[#改ページ]

夕ぐれ



夕ぐれ
ほの白き石階をのぼり
女こそは
しぬびかに祈りするなれ

眼をつむり
ほのかなる囁きをもて
背まるう
み仏に祈りするなれ

ひとりなる
皮膚あをきみ寺のわらべ
かかる夕ぐれ
人霊のあゆみを知りけり
[#改ページ]

ニーナ



ニーナ
眼の隈の青いニーナ
ニーナはゆうかりの葉

その肩も痩せてゐて
いそがしいあしどりで歩いてゆく

ニーナ
ニーナに
誰か虔ましい恋をしませんか
[#改ページ]

物語



私の読んでゐる長い長い恋の物語――
それがききたいのか
夜ふけの屋根へ鳥がきてとまつたやうだ
月の光にぬれながら静かに休んでゐるやうだ

私の読んでゐる長い長い罪の物語
それをきいてゐるのか 鳥の身もこんな夜頃は
ぢつと頸をすくめて
いつかしら苔のやうに泣いてゐるやうだ
[#改ページ]





太郎
夜ふけて白い花をたべる
太郎
太郎よ
その花はうまいか

うまければ露にぬれ
夜ふけて白い花をたべる
太郎
太郎はまことに淋しいのです
[#改ページ]

私の猫



わたしの猫はずゐぶんと齢をとつてゐるの…

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