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瞼の母
まぶたのはは
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「長谷川伸傑作選 瞼の母」 国書刊行会
2008(平成20)年5月15日
初出「騒人」1930(昭和5)年3、4月号
入力者門田裕志
校正者Juki
公開 / 更新2014-09-02 / 2014-09-16
長さの目安約 53 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

〔序幕〕第一場 金町瓦焼の家(春)
    第二場 夏の夜の街(引返)
    第三場 冬の夜の街
〔大詰〕第一場 柳橋水熊横丁
    第二場 おはまの居間
    第三場 荒川堤(引返)


番場の忠太郎  夜鷹おとら  洗い方藤八
水熊のおはま  素盲の金五郎  煮方子之吉
その娘お登世  鳥羽田要助  出前持孫助
金町の半次郎  突き膝喜八   女中おふみ
半次母おむら  宮の七五郎  小女おせう
半次妹おぬい  板前善三郎  銭を乞う老婆
芸者三吉・およつ・魚熊・魚北・帳場与兵衛・通行の男女・唄好きの酔漢・母を迎える男・寄席帰りの母・渡し舟のもの・出入りの頭・駕丁・そのほか。
[#改ページ]


〔序幕〕




第一場 金町瓦焼の家(春)

江戸川沿岸、南寄りの武州南葛飾郡金町の瓦焼惣兵衛の家。
嘉永元年の春。夕暮れ近くより夜にかけて――。

右手寄りに母屋(土間への入口と障子の嵌った縁側付きの座敷)。草葺のがッしりとした建築、中央から左手へかけ瓦焼場、竈が幾つかある。その奥は低き垣、外は立木のある往来。
おぬい (惣兵衛の妹。餌を拾う鶏を小舎へ追い込む振りをして、それとなく外を見張っている)
子供  (数人、隠れん坊をして、往きつ来つして遊んでいる)

旅姿の下総の博徒突き膝の喜八と宮の七五郎、往来へきて立ちどまる。
喜八  (子供の一人を手招ぎして、何か訊く)
子供  (知らないと頭を振る。他の子供は喜八、七五郎を不思議そうに、たかッて見ている)
七五郎 何ッ知らねえ。そんな事があるもんか。
喜八  七、またお株が始まった。ここは下総とは川一つ国が違うぜ。旅先だぜ。
七五郎 だってお前。同じ村の餓鬼共のくせに知らねえ奴があるもんか。
子供  (怖れて、一人逃げ二人逃げ、一緒にどッと逃げて行く)
喜八  それ見ろい。子供達が怖がって、みんな逃げて行ってしまった。
七五郎 逃げて行ってもいいじゃねえか。尋ねる家はここなんだ。
おぬい (そっと母屋の方へ行きかける)
七五郎 おお、娘さん。
おぬい はい。(仕方なしに立ちどまる)
喜八  金町の瓦屋さんで、惣兵衛さんは此方だね。惣兵衛さんにお目にかかりたい。
七五郎 惣兵衛というおやじをここへ出せ。
おぬい 兄さんは講中の方とご一緒に、お伊勢様へ参って居ります。
喜八  留守か。そうかい。して家にはだれがいる。
七五郎 お前の他に男はいねえか。
おぬい 職人達はきょうは休み、年期の者は行徳へ使いに行きました。
喜八  そんな人の事じゃねえ。
七五郎 半次が帰って来てるか、それを聞いているんだい。
おぬい 半次兄さんなら居りません。
七五郎 白ばッくれるな。
喜八  七。そんなにいうな。相手は綺麗な娘ッ子だ。おとなしく云えよう。
七五郎 だって、お前、図々しく、居ねえなんて吐かすからよ。
喜八  まあ…

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