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丘の銅像
おかのどうぞう
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「新美南吉童話全集第一巻 ごんぎつね」 大日本図書
1960(昭和35)年6月20日
入力者江村秀之
校正者小林繁雄
公開 / 更新2013-08-28 / 2014-09-16
長さの目安約 17 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 丘のふもとの、うつくしい平和な村に、ハンスという、詩人が住んでいました。
 丘の上に立って、うつくしい村をながめては、歌にうたい、牧場にいって、やさしいひつじのむれをながめては、詩をかくのがつねでした。ハンスのつくった詩は、国じゅう、だれひとり知らないものはないほどでした。
 あるとき王さまは、この村のそばを通りかかりましたが、ハンスがこの村にいると聞いて、わざわざ、この名高い詩人に、あいにこられました。王さまでさえ、そんなに、ハンスをたいせつに思っていられるのですから、村の人たちが、ハンスをうやまったことは、いうまでもありません。そんなわけですから、このハンスが年とって、天国へめされていったときには、村の人たちは相談をして、ハンスをいつまでもわすれないように、銅像をたてることにきめました。
 三か月ほどのち、丘の上のにれの木の下には、りっぱなハンスの銅像がたちました。ちょうど、ハンスと同じ高さで、顔から形から、生きてるときの、ハンスそっくりでした。村の人たちは、その銅像を見あげては、生きてたときのハンスが、牧場のさくのそばで、ひつじのむれをいつまでも、じっと見つめているすがたを思い出すのでした。
 ながい年月がたちました。
 ハンスの生きていたころ、まだ、ほんのあかんぼうだった人たちが、今はもう、かみの毛が雪のように白くなって、まごたちのおもりをしていました。まごたちのおもりをしながら、ハンスがつくった子守歌をうたっていました。まごたちが「むかしばなし」をせがむと、その老人たちは、ハンスの話をして聞かせるのでした。
 それからまた、ながい年月がたちました。もう村には、ハンスのことを知ってる人は、なくなってしまいました。けれど、丘の上にはまだ、ハンスの銅像が村のほうを見おろして、ほほえみながら立っていました。
 ある日、村の百しょうがひとり、教会へいって牧師さまに、こうたずねました。
「丘の上に立ってござらっしゃるお方は、いったい、どなたでござんしょう。」
 すると年とった牧師さまは、
「あれはハンスといってな、わしのおじいさまのおじいさまが生きてござらっしゃったときより、もっといぜんに、村に住んでいらっしゃった、えらい詩人じゃ。」
と、答えました。
 そのころ、その国では、わるい伝染病がはやっていました。伝染病は丘の下のうつくしい村へも、くろい大きな鳥のかげのように、やってきました。村の人たちは、どんどん、死んでいきました。もしも、ヘンデルという、えらいお医者さんが、一生けんめいにはたらいてくれなかったら、村の人たちは伝染病のために、ひとりのこらず、死んでしまったかも知れません。このヘンデルが、伝染病のばいきんを見つけてくれたので、村の人たちは、病気からすくわれるようになりました。村の人ばかりでなく、国じゅうの人がすくわれました。そこで、村の人のよろこび…

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