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独楽
こま
著者
文字遣い新字旧仮名
底本 「高祖保詩集」 現代詩文庫、思潮社
1988(昭和63)年12月20日
入力者浜野智
校正者八巻美恵
公開 / 更新2014-06-08 / 2014-09-16
長さの目安約 16 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

征旅


蛾は
あのやうに狂ほしく
とびこんでゆくではないか
みづからを灼く 火むらのただなかに

わたしは
みづからを灼く たたかひの
火むらのただなかへ とびこんでゆく
あゝ 一匹の蛾だ


夢に白鶏をみる

暁のともしびほそく灯りて歳新し 城太郎

暁のともしび ほそい庫裡に
神さびた白鶏が ククク、クと鳴いて
羽搏いた

あとは 森閑と なり鎮まる
(鶏の面輪は 阿母の俤あつて 床しい)

いま 厳かに
うつつなに
――歳 軋り 現実に入り来[#ルビの「また」はママ]る


独楽


秋のゆふべの卓上にして
独楽は廻り澄む

――青森大鰐、島津彦三郎作、大独楽が
――鳥取の桐で作られた占ひ独楽が
――玉独楽が
――陸奥の「スリバツ」独楽が
――土湯、阿部治助作といふ 提灯独楽が
――伊香保の唐独楽が
――九州、佐賀のかぶら独楽が
――三重、桑名のおかざり独楽が

まはる まはる
秋のゆふべの卓上にして
独楽が 廻つてゐる

麦酒樽のおなかを ゆさぶりながら 廻るもの
六角の体を傾げながら 蹣跚くもの
口笛をふきながら 廻るもの
ころりころりと廻りながら 転りおちるもの
仆れたのち 廻りはじめるもの
廻りながら 仲間に頭を ぶちあてるもの
はやくも寝そべつて了ふもの
寂ねんと
孤り 廻り澄むもの

独楽よ
廻り廻つて澄みきるとき
おまへの「動」は
ちやうど 深山のやうな「静」のふかさにかへる
静にして
なほ 動
――この「動」の不動のしづかさを観よ

秋のゆふべの掌の上
独楽 ひとつ
廻りながらに澄んでゆく


半球の距離


卓上燈の傘のうへに きて
夜が
うつとりと 眼を閉ぢる
――鎧戸のそとで 雪が ささやく
(雪の重さが やはらかに 時間に零りつもる

咳きながら
地球のうへを
ひとつの跫音が 近づく
ひとつの跫音が とほりすぎてゆく

わたしのペンは ささやく
時間よりもながい尺牘を 一通

たたかふ義弟は
やがて
短く この
義兄の愛情を 読みをはるであらう
あたたかい東半球のあちら側
――剣の柄を かい込み
ぼんのくぼに 汗を光らせながら

鎧戸のそとに

卓上燈の 傘のうへに 夜、

夜から剥落する
剣のやうな時間の微針が 粒子が
ささやきが
わたしの双の肩をさして
ひり ひりと 零りつもる


元朝


あかるい庭のはうで
胸張つて 高音
ことしの鶯が 啼く

子の眠りはふかい
ふかい眠りから 子を呼びさますもの
――眼にみえぬところにあるもの
ちちか
ははか
否 いな、とほきにある
神のおん手のごときもの

ひかりが 怒つてゐる
ひかりが 咲つてゐる

怒る ひかりに 親しめ
咲ふ ひかりを 畏れよ

あかるい夜のそらで
――胸張つて
ことしの奴凧が 跳ねてゐる


大歳


冬の蝶――山茶花の花と間違へられて、困る。動かないでゐ…

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