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宇宙怪人
うちゅうかいじん
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「怪奇四十面相/宇宙怪人」 江戸川乱歩推理文庫、講談社
1988(昭和63)年1月8日
初出「少年」光文社、1953(昭和28)年1月号~12月号
入力者sogo
校正者大久保ゆう
公開 / 更新2017-06-16 / 2017-04-03
長さの目安約 184 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

空とぶ円盤
 空とぶ円盤は、アメリカからはじまって、世界じゅうの空にあらわれました。日本にもあらわれたことが、ずっとまえの新聞にのっていましたが、そのお話のはじまるころには、それが日本の空に、しきりにあらわれるようになったのです。大きなおさらのような丸いものが、ひじょうな早さで、高い空を飛んでいくのです。どこかの国の新がたの偵察飛行機ではないかという人もありました。いや、ひょっとしたら、宇宙のどこかの星から、地球のようすを、さぐりにきたのかもしれない、という人もありました。
 でも、おおくの人は、
「そんなばかなことがあるものか、大都会の人が、空をながめていて、みんなが見たのなら信用できるが、山おくや、いなかの人が、ひとりや、ふたり見たというのでは、見ちがいということがある。大きな流星を、円盤のように感じたのかもしれない。また空には蜃気楼のような現象がおこるものだから、山道などを走っている自動車のヘッドライトが、空にうつって、ちょうど円盤が飛んでいるように、見えたのかもしれない。いずれにしても、そんなふしぎな飛行機などあるはずがない。なによりのしょうこには、空とぶ円盤が、この地球の上へ、一どだって着陸したことがないじゃないか。」
といって、まじめに考えようともしませんでした。
 しかし、空とぶ円盤のほうでは、そんなうわさにはむとんじゃくに、このごろでは、また、ほうぼうの国へと、しきりと、あらわれるようになりました。いままで、あまり飛んでこなかった日本の空へも、たびたび、すがたをあらわすのです。でも、じっさいに、それを見た人は、ごくすくないのですから、新聞にそのはなしが出ても、見ない人たちは信用しません。きっと、なにかほかのものと、見まちがえたのだろうと、たかをくくっていました。
 ところが、ある日のこと、空とぶ円盤をバカにしていた人たちを、アッといったまま、息もできないほど、びっくりさせる事件がおこりました。それは、いったい、どんなできごとだったのでしょう。それをおはなしするまえに、まず、平野少年を、ごしょうかいしなければなりません。
 平野少年は、小学校の六年生で、おうちは、世田谷区のはずれの、さびしいところにありました。平野君のおうちのそばに、北村さんという、二十五、六歳の、理科のことをよく知っているおじさんがすんでいて、一月ほどまえから、平野君は、その北村おじさんのうちへ、よく遊びにいくようになっていました。平野君は理科がすきで、おじさんのお話が、おもしろくてたまらなかったからです。
 北村さんのおうちは、バラックだての、三つしかへやのない、小さな家で、おじさんは、耳の遠いばあやと、ふたりきりで、そこにすんでいました。おへやには、むずかしい理科の本が、たくさんならんでいて、けんび鏡や天体望遠鏡などもおいてありました。平野少年は、その望遠鏡で、月や火星を…

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