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電人M
でんじんエム
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「仮面の恐怖王/電人M」 江戸川乱歩推理文庫、講談社
1988(昭和63)年8月8日
初出「少年」光文社、1960(昭和35)年1月号~12月号
入力者sogo
校正者茅宮君子
公開 / 更新2018-02-17 / 2018-01-27
長さの目安約 160 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

鉄塔の火星人
 少年探偵団員で、中学一年の中村君と、有田君と、長島君の三人は、大のなかよしでした。
 ある午後のこと、有田君と長島君が、中村君の家に、遊びにきていました。
 中村君の家は港区のやしき町にある、広い洋館で、その二階の屋根の上に、三メートル四方ほどの、塔のような部屋がついていました。その部屋だけが三階になっているわけです。
 中村君は星を見るのがすきで、その塔の部屋に、そうとう倍率の高い天体地上望遠鏡がそなえてありました。
 三人はその部屋にのぼって、話をしていましたが、やがて話にもあきて、望遠鏡をのぞきはじめました。
 ひるまですから、星は見えませんが、地上のけしきが、大きく見えるのです。ずっと向こうの家が、まるでとなりのように、近く見えますし、町を歩いている人なども、恐ろしいほど、すぐ目の前に見えるのです。
 こんどは長島君の番で、望遠鏡の向きをかえながら、一心にのぞいていましたが、やがて、東京タワーの鉄塔が、レンズの中にはいってきました。
 ここからは五百メートルも離れているのに、まるで目の前にあるように、大きく見えるのです。展望台のガラスごしに、見物の人たちの顔も、はっきりわかります。
 長島君は、むきをかえて、タワーのてっぺんに、ねらいをさだめ、だんだん下の方へ、望遠鏡のさきを、さげていきました。
 組み合わせた鉄骨が、びょうの一つ一つまで、はっきりと見えます。
 だんだん、下にさがるほど、鉄骨の幅が広くなって、展望台のすぐ上まできたとき、長島君は、思わず「あっ。」と、声をたてました。
「おい、どうしたんだ。なにが見えるんだ。」
 中村君と有田君が、声をそろえて、たずねました。しかし、長島君は返事もしません。息をはずませて、くいいるように、望遠鏡に見いっています。
 それもむりはありません。望遠鏡の中には、じつにふしぎな光景がうつっていたのです。
 タワーの鉄骨に、なにか黄色っぽい、グニャグニャしたものが、まきついていたのです。はじめは、はだかの人間かと思いましたが、そうではありません。なんだか、えたいのしれない、へんてこなものです。しかも、そいつが、生き物であるしょうこには、ゆっくりゆっくり、動いているのです。
 よく見ると、そいつの頭は、タコ入道のように、でっかくて、かみの毛なんか、一本もはえていません。その顔に、ギョロッとした、まんまるな目が、二つついているのです。目の下に、とんがった口のようなものがついています。どう見ても、タコ入道です。
 その頭の下にやっぱりタコの足のようなものが六本ついていて、その足で、鉄骨にまきついているのです。
「タコなら八本足のはずじゃないか。あいつは六本しかない。それに、全体の感じが、タコとはちがう。もっと、きみのわるいものだ。」
 長島君は、心の中でそう思いました。だいいち、あんな大きなタコってあ…

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