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噺家の着物
はなしかのきもの
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「日本の名随筆 別巻29 落語」 作品社
1993(平成5)年7月25日
入力者門田裕志
校正者noriko saito
公開 / 更新2015-02-14 / 2015-01-16
長さの目安約 13 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 咄家の着物とあらたまっていうほどのこともないが、落語のなかにでてくる人物の着物をお客に説明するにも、咄家自身のなりがわるいといいにくいことがある。
 たとえば、『夢金』で、
 雪のなか舟宿へくる侍と娘“黒羽二重の五ツ所紋付”、黒がやけて羊羹色になり、紋だけ黒くなっていて“羊羹羽二重黒紋付”、茶献上の芯のでた帯を、胸高に締め、朱鞘の禿っちょろけた大小落し差し
 というようなことをはなすのに、自分の紋付が衿垢のついた色のさめた紋付で、手垢で光っているのでは気がさして、大きな声でお喋りができない。
『佃祭』という咄で、次郎兵衛さんの服装を、女房が、
 薩摩の蚊飛白、紺献上の五分づまりの帯、透綾の羽織、扇子と煙草入れを腰へ差し、白木ののめりの下駄を履き、白鞣の鼻緒に、十三本柾が通っている。桐は越後ではなく会津でございます。
 というように、咄は細かいほど盛りあがるのである。
 ついでに――
『夢金』の浪人者は黒羽二重、娘は黄八丈の対服。
『高尾』で仙台公のなりが錦糸で竹に雀、紫頭巾。
『池田大助』の奉行のなりが紬の対服に仙台平の袴。
『浮世床』の娘のなりは演る咄家の好みによる。
『片棒』は手古舞のなりが縮緬の長襦袢、片肌ぬぎ。繻子のたっつけ袴。
『蛙茶番』は結城のあいまん。古渡りのらんたつ。
『弥次郎』黒羽二重、古渡り緞子の野袴。
『錦の袈裟』緋縮緬の長襦袢。
『花見の仇討』浪人者と六部、六部のなりは鼠の袈裟、鼠の手甲、鼠の脚絆に鼠の足袋。
『巌流島』武士のなり。
『孝行糖』璃寛茶、芝翫茶。
 故人住吉町の円喬師が、『垂乳女』の枕に、
 縁は異なもの味なもの。御召物にも御縁がある。たとえば、合わせた物なれば、上に着る表の布が御亭主、裏につく絹が御内儀さん。そこで、見立てが悪いと「釣合わざるは不縁のもと」。また見立てのよい夫婦でも、裏でも表でも嫉妬の焼焦げをこしらえたり「しみ」などをこしらえると、いったんといて、仕立て直す。折角まとまっている夫婦が、一時離ればなれになる。合わせ物は放れ物とは、ここから割りだしたのかも知れません。かりにこれから春着をこしらえると、昨今は黒が流行で、羽二重がよい。
 男の縮緬や、かべなどは、にやけるし、紋羽二重とくると坊さんじみるし、黒繻子がよい、とくると出羽の秋田で織りますのを最上等と致してあります。裏は甲斐絹がよいが、どういうものか甲斐絹は近頃はやらない。すべりも悪いし重みもあるが、緞子にしようか、いっそ繻珍にしようとなると、西陣で結構なのができますが、俗に唐物と申しまして清国で織りますのを最上等と致します。
 すると清国の御内儀さんと秋田の旦那様と御夫婦になると、面白いもので、羽織が秋田と清国とくる。着物は斜子の節がよかろうとくると信州上田が本場で、これで三ヶ国。下着が琉球とくると日本の端沖縄県、これで四ヶ国。裏につく絹は秩父で、…

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