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編輯室より
へんしゅうしつより
作品ID57135
副題(一九一三年七月号)
(せんきゅうひゃくじゅうさんねんしちがつごう)
著者伊藤 野枝
文字遣い新字旧仮名
底本 「定本 伊藤野枝全集 第二巻 評論・随筆・書簡1――『青鞜』の時代」 學藝書林
2000(平成12)年5月31日
初出「青鞜 第三巻第七号」1913(大正2)年7月号
入力者酒井裕二
校正者雪森
公開 / 更新2016-10-25 / 2017-01-15
長さの目安約 3 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


□此の間中央新聞の白田天坡といふ記者が事務所に来て皆に会ひ度いと云つたさうです。丁度面会日でもなんでもなかつて、小母さん一人だつたので断りますと、その記者は玄関先きに立つて、いつまでも一人で勝手な事をシヤベツて出て行つたさうです。その日私は頭痛がして臥つてゐますと、矢張りその記者が来ました。勿論私も断りました。らいてうもるすで会はなかつたさうです。それで、ちつとも種がとれなかつたわけです。そうしますと此度は十二三日頃に中央新聞に出た、「屏息せる新しい女」といふ題の下に書かれた青鞜社の記事は滅茶々々なものでした。いゝかげんにこしらへ上げたものです。それが実に下等な事ばかしならべてあるのです。事務所にあてた小母さんの家の家賃までかつぎ出してあつたのには驚きました。
□先月号の表紙の裏に広告を出したのが大変に感じを悪くしました。青鞜ではあんな事をした事はないのです。あれは書店が禁を犯したのです。以後はきつとあんな感じの悪い事は致さないつもりです。
□青鞜社の事務所を巣鴨においたと云ふ事に就いていろ/\な臆測をする人がありますが、別に何にも大した事はないのです。前から東京に出たいと云つてゐた小母さんが茅ヶ崎から出て来て、さがした家が大変いゝうちだしそれに、万年山は市区改正や何かあつて、面倒ではあるしするので越したのです。
□らいてうは此の号の編輯をすますと同時に廿六日の夕方東京を立つて旅に出ました。多分行先は赤城だらうと思ひます。白樺の葉の貼つたはがきを送つてもらう約束をしました。私はそれを待つてゐるのです。
□街路がどれも勢よく葉を出しました。あの御徒士町の通りのツン/\したプラターヌスの葉も真青になりました。
□歌津ちやんはお芝居や寄席や新内や歌沢で日を暮してゐます。私は、うちにゴロ/\して、いつからいてうと岩野さんと歌津ちやんと私と四人で堀切に行つたときに買つて貰つた小さな独楽をまはして遊んでゐます。
□小母さんのうちにはいろ/\な花が咲きました。大変きれいです。いまに小母さんの家は花でかこまれるでせう。
□校正つて本当に嫌やな仕事です。厄介な仕事です。出ない間ボンヤリして機械の廻る音を聞いてゐますと気が遠くなつてしまひます。一昨日歌津ちやんは眠つてしまひました。こゝの校正室は風通りがよくていゝ気持ちに眠れるのです。
□今日は岩野さんがゐらしたのですけれども歌津ちやんとしんこ細工を見に行くつて出て行つてしまひました。
[『青鞜』第三巻第七号、一九一三年七月号]



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