えあ草紙・青空図書館 - 作品カード


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時間からの影
じかんからのかげ
原題The Shadow Out of Time
著者
翻訳者The Creative CAT
文字遣い新字新仮名
入力者The Creative CAT
校正者
公開 / 更新2015-08-20 / 2016-06-22
長さの目安約 143 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

第一章

 特定の印象を裏付ける神話的な源を闇雲に信じることでのみ救われてきた悪夢と恐怖の二十二年の後、私は、一九三五年七月十七日から十八日にかけての夜に自分が西オーストラリアで発見したと考えるものが真正だと自ら進んで断言しようとは思わない。私の体験が全面的ないし部分的に幻覚であると希望するだけの理由があるからだ――実際、幻覚の原因が有り余る程存在した。だが尚、それは悍ましい程現実的だったのであり、ために私は時として希望を失いそうになる。あれが実際に起きたことだとすると、人類は大宇宙からの声(*1-1)を、僅かに言及するだけで茫然自失するような渦巻く時の奔流の中における彼自身の立場を、受け容れる準備をせねばならない。彼はまた、種族全員を巻き込むことにはならないにせよ、その中の冒険的な構成員の上に醜怪にして思考を超えた恐怖を落ちかからせるであろう、特異かつ潜在的な危険に対して警戒せねばならぬのだ。我が遠征隊が精査せんとした知られざる原始巨大建築の断片を発掘するいかなる企ても金輪際放棄するよう私が自らの全力を挙げて主張するのは、まさに後者の理由による。
 正気でありかつ目覚めていたと仮定すれば、あの夜の私の体験はこれまでいかなる人間にも降り掛かったことのないものだった。そればかりではない、神話や夢として捨て去る方策を探してきた全ての事柄に対する慄然たる確認になるのだ。ありがたいことに確証はなかった。動かぬ証拠となる――真正でありかつ、かの有害な深淵より運び出したなら――畏怖すべき物体を戦慄の裡に失ってしまったからである。恐怖に遭遇した時私は一人だった――そして現在に至るまで誰にもそのことを伝えていない。当該方面での発掘作業を止めさせることはできなかったが、それらは偶然、及び移動する砂のおかげでこれまでのところ発見されずにすんでいる。今や私は系統立てて明確な意見を述べねばならない――私自身の心のバランスのためだけではなく、真剣に読んでくれるかも知れない他の方に警告を与えるためにも。
 私はこれらのページ――前の方の大半は総合誌や科学誌を具に読まれている方には馴染みの内容となろうが――を故郷に向かう船室内で執筆している。息子であるミスカトニック大学のウィンゲイト・ピーズリー教授に渡すことになろう――遠い昔、私が奇妙な健忘症を発症した後も家族の中でただ一人私についてきてくれた人物であり、私の事例の内部的な事実に最も通暁している者である。私が語ろうとしている宿命的な夜のことを皆が嘲笑しようと、彼だけはそうしないだろう。書かれた文章として事実を明らかにされたほうが彼にとって都合が良かろうと思ったため、出帆前に口頭でそれを伝えることはしなかった。手間を掛けて再読してもらえば、私の混乱した舌が伝え得る以上に納得してもらえるのではないか。この報告については、彼が最良だと判断する…

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