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現代学生立身方法
げんだいがくせいりっしんほうほう
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「大隈重信演説談話集」 岩波文庫、岩波書店
2016(平成28)年3月16日
初出「成功 第十卷第二號」成功雜誌社、1906(明治39)年10月1日
入力者フクポー
校正者門田裕志
公開 / 更新2017-12-12 / 2017-11-24
長さの目安約 4 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

まず的確なる目的を定めよ
 現今多数の青年の各自に志すところは十人十色、種々多様であろう。あるいは行政官を志望する者、あるいは外交官、あるいは判検事あるいは技術家、商業家、農業家、工業家、医師、芸術家、あるいは文学、あるいは教育、あるいは宗教、各自の性質と境遇とに由りて千差万別であろう。而してまたその志望するところに遵って、各自になんらの障碍なく着々と進み得らるるかというに、多くの人の進み行く道程を調べてみるに、また色々の境遇に由って色々に変っている。例えば中学を出でて高等商業学校に入るつもりであったのが入学試験に落第したために、全く毛色の変った学校に入ってそれで進んで行く者もあり、あるいは外交官試験や高等文官試験などに落第したがために実業界に転ずるという如き例は甚だ多い。かくの如く人の一生の行路は、多くはやむを得ざる境遇に由りて種々に変って行くものであれば、これを理論的にその成業の道程、成業の方法を規定することは出来ないのである。然るにもしこれを通則的に概言するならば、青年の成業の第一要件はまず的確なる目的を定むることである。もし真に的確なる目的を定むることが出来たならば、もはやその人はその事業の過半は成し得たも同じだといわれているが、実にその人の特性、人物に的確なる目的を定むることは決して容易の事ではない。

畢竟自己を自覚しないからだ
 然らば如何にしてその目的は定むべきやといえば、まず自己の境遇と嗜好と、特性即ち技能とを十分に計らねばならぬ。これが十分に判然した後に於ては自己の向うべき進路はほぼ定むることが出来る。かくして目的が定まった後に於ては、いうまでもなく出来得るだけ忠実に、熱心にその目的に向って努力するのである。近来青年の通弊ともいうべきは、自己の境遇と嗜好と特性とを十分に計らず、徒に理想のみ高尚となり、ただ一時的栄華を羨み社会の生存競争場裡に進み入る結果は、忽ち失敗に終るの例は甚だ尠なくない。甚だしきはこれに留まらず、一度失敗したがために元気沮喪し、ついに再び起つの勇気をなくするに至る者もある。これらは本よりその人の薄志弱行に基づくとはいえ、畢竟自己を自覚していなかった故である。

初めより大を望む者は大を成し得ざる人
 故に現代青年の最も確実なる成業の方法は、自己の的確なる目的に向って急がず、焦らず着々と一歩一歩に努力して進み行くことである。而して進み行く方法、即ち目的に達する手段として取るべき仕事は、車を引くも宜し、牛乳配達も宜し、普通に卑賤と称している労働、その種類が何であるとも少しも遠慮するの必要はない。ただ自己の運命に安んじて力の限り努力せよ。而してその間に精力と財とを蓄積して一歩一歩に目的に近寄ることを励むべきである。この意味に於て労働は神聖である。この労働が出来得る男ならば各自にその目的に達し得べきことを疑わぬ。天下を平定して…

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