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作文三篇
さくぶんさんぺん
著者
文字遣い旧字旧仮名
底本 「南方熊楠全集第五卷 〔文集Ⅰ〕」 乾元社
1952(昭和27)年3月30日
入力者フクポー
校正者村上尚美
公開 / 更新2018-04-15 / 2018-03-26
長さの目安約 2 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


祝文

 當今開化文明ノ域ニ進入シ、積年ノ舊慣陋習ヲ一洗シ、文學ノ大ニ行ハルヽヤ、僻陬ノ村落ト雖モ聖教ニ沐シ、徳化ニ浴セサルハ無ク、各其業トスル所ヲ得ル。嗚呼、是焉ンゾ朝廷ノ明正人民ノ懇親ニ因ラサルヲ得ンヤ、近日、我町内有志輩ノ懇親會ヲ創始スル實ニ衆庶ノ幸福、盛業ノ基礎タルニアラズヤ、余モ亦此美事ニ逢ヒ欣喜ニ堪ヱズ、因テ此席ニ臨ミ聊カ拙辭ヲ吐露シ、以テ祝意ヲ陳述セサルヲ得ズ

明治十二年十二月十三日
中學校第七級生
南方熊楠
十二年九ヶ月

火ヲ愼ム文

 人世外來ノ災禍多クシテ測ル可ラズ、就中、旱魃洪水地震等ハ天ノ造成セル災ニシテ、人ノ防禦ス可ラサルモノナリ、然レトモ火ノ災ニ至テハ即チ之ニ異ナリ、夫レ火ハ之ヲ以テ諸品ヲ煮、之ヲ以テ諸物ヲ製造スル等、其人ニ益アル事莫大ナリ、是レ造物主ノ人ニ授與スルニ火ヲ以テスル所以ナリ、然リ而シテ彼ノ火ノ災ナル者ハ、到底人ノ之ヲ使用スルノ輕シキニ出デ、止ニ其家ニ害アルノミナラズ、鄰家に[#「鄰家に」はママ]延燒シ、近人ヲ擾亂セシムルニ至ル、嗚呼、人タルモノ火ヲ使用スルニ愼謹ノ二字ヲ以テセザル可ケンヤ

明治十二年十二月十三日
中學校第七級生
南方熊楠
十二年九ヶ月

教育ヲ主トスル文

 夫レ國ハ人民ノ群居シ成レルニシテ、其人民ハ皆父母ノ遺體ナリ、是ヲ以テ凡ソ國家ノ盛衰ハ、人民ノ賢愚善惡ニ關シ、人民ノ賢愚善惡ハ、其父母ノ之ヲ教育セルト否トニ係ル、人ノ性質タルヤ、素ヨリ賢愚善惡ノ別ヲ有セザルナリ、而シテ、其性ヲ誘クニ善ヲ以テスレバ、即其性善、之ヲ導クニ惡ヲ以テスレバ、即其質惡、是ニ於テヤ、始メテ善惡ノ別チアリ、是ヲ以テ墨子衢ニ泣ケリ、之ニ教ルニ道ヲ以テスレバ、即其性賢、之ニ訓ルニ無道ヲ以テスレバ、即其性愚、是ニ於テヤ、始メテ賢愚ノ分アリ、是ヲ以テ孟母三遷の[#「孟母三遷の」はママ]擇アリ、故ニ人ノ性、其原同一ニシテ、他ヨリ之ヲ教導スルノ法ニ由テ、始テ善惡賢愚ノ差別アルナリ、之ヲ物ニ喩フルニ、猶ホ水ヲ盛ルニ方圓ノ器ニ從テ、其形状亦變スルガ如シ、是ヲ以テ人ノ父母タルモノ、子ニ旨味ヲ食ハシメ繍錦を[#「繍錦を」はママ]着セシムル事ニ注意センヨリハ、當ニ幼時ヨリ學術ヲ勉勵セシメ、人道ヲ了知セシムル事ヲ務ムベキナリ

明治十三年四月十五日
南方熊楠



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