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政治学入門
せいじがくにゅうもん
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「政治学入門」 講談社学術文庫、講談社
1977(昭和52)年10月10日
初出「政治学入門」アテネ新書、弘文堂、1951(昭和26)年5月
入力者フクポー
校正者富田晶子
公開 / 更新2018-01-01 / 2018-01-01
長さの目安約 100 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

はしがき



 入門書が要求されているということで、本書ができたのであるが、しかし「政治学入門」とはそもそもどう理解されたらよいものであろうか。それは政治学の方法論を説き、政治学の諸文献を解説したようなものなのであろうか。それとも対立しているいろいろの学説を並べ、著者の主張はなるべく出さないように書いたもののことであろうか。それともまた政治学の全領域を簡単に平易に圧縮したもののことであろうか。
 これらのいろいろの解釈が可能であると思われるが、著者は本書ではそれを、政治現象の基本的な諸問題に一通りの究明を試み、より詳しい研究への示唆を与えるものと解釈した。その結果既に著者が『政治学』(勁草書房)で取扱っている基本的な部分を、多少順序を変えたり、加除したり、わかり易くして、繰返すような形にならざるを得なかったのである。より詳細な論述や文献については、右の書物について見て頂きたい。
 いずれにしても入門書の最大の使命は、その学問への興味をそそることであろう。従って本書が政治学への興味を、一般の人々に抱かせることに失敗していたら、入門書としての価値はない。著者の恐れるのはそのことである。

一九五一年一月
矢部貞治
[#改丁]

序言


 すべて学問を論ずる場合には、認識の対象と方法を規定する方法論というものについて述べなければならないが、実際に学問をする場合正しい方法論は、その現象の実体を研究する道程の中から生れてくるもので、現象の実体も知らずに方法論に拘泥するのは、研究者が往々にして陥る邪道である。正しい方法論を求めることは、いつも念頭においていなければならぬが、しかしまず現象そのものの実体と取組むことが、とりわけ初めてその学問に志す者の正道である。だから本書では、方法論については取り立てて述べない。論述を進めてゆく間に、おのずからそれに触れるところがある。ここではただ政治学に接する場合の心構えについて、一言しておきたい。
 政治学は、いうまでもなく文化科学の一つであって、自然科学ではない。自然科学の基礎になっている自然法則というものは、概して永久不変性と普遍妥当性を持つ正確な法則で、自然科学は、真に科学の名に値する厳密な科学ということができるが、文化科学の基礎にある文化法則は、それとは著しく性質を異にしている。文化現象は人間の精神、意思、叡知、主体性、創造性、感情、習慣、性格、欲望など複雑な要素を含んで成立するものであって、従って文化法則というものは、正確な法則というより、むしろせいぜい類型とか傾向とかいうべきもので、文化科学は自然科学のような厳密な科学ということはできない。
 自然科学での法則や定理は、一般に普遍妥当性を持つから、推理と計算の能力さえあれば、実験を介して無限に展開することもできるが、文化科学の問題は、一般に時と所と人との複雑な現実条件の…

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