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民芸品の部屋で
みんげいひんのへやで
作品ID59022
副題我々はメキシコ美術をこうみる
われわれはメキシコびじゅつをこうみる
著者芥川 紗織
文字遣い新字新仮名
底本 「芥川紗織展」 横須賀美術館、一宮市三岸節子記念美術館
2009(平成21)年2月
初出「美術批評」美術出版社、1955(昭和30)年10月1日
入力者かな とよみ
校正者たけうち(み)
公開 / 更新2018-05-24 / 2018-04-26
長さの目安約 2 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


 前にタマヨの絵を美術雑誌の原色版で見てそのまか不思議な色彩にひどく惹かれました。
 それ以来私は何が何でもタマヨのファンになってしまいました。タマヨのよく使う発酵した様な異様な黄色や紫や桃色にひきつけられたのです。今度のメキシコ展で民芸品の部屋に足をふみ入れると私は“これだ。タマヨの色は”と思いました。民芸品の切り紙も人形も皆タマヨのあの魅力的な紫色や桃色なのでした。これはメキシコの現代絵画のすべてに云えることなのですが、何千年も昔の土偶の形態も民芸品のネンドの人形の色も皆現代絵画の中にそのまま生きていて彼等の激しい力と情熱を語る強力な言葉になって居るのです。
 全くメキシコの絵画は彼等の言葉で彼等の問題を精一杯に叫んで居ます。それ故にメキシコの絵画はメキシコの国の誇りとなりメキシコ人すべての誇りとなっているのだと思いました。私はメキシコの作家達が大きなビルの外側の巨大な壁面に思い切り腕をふるって壁画を描いていることを心からうらやましく思います。国と国民の生活と作家がこんなに密接につながっている国を素晴しいと思いました。日本の現代絵画は日本の国や日本の多くの人々とは何の関係もないところで描かれているということが、私には間違ったことに思えるのです。(「美術批評」1955年10月)



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