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小熊秀雄全集-14
おぐまひでおぜんしゅう-14
副題童話集
どうわしゅう
著者
文字遣い新字旧仮名
底本 「新版・小熊秀雄全集第2巻」 創樹社
1990(平成2)年12月15日
入力者浜野智
校正者八巻美恵
公開 / 更新1999-03-05 / 2014-09-17
長さの目安約 133 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

自画像


(一)
 此所にトムさんと言ふ至つてお人好しの農夫がをりました、この村の人達は余りお人好しの[#「お人好しの」は底本では「お好しの」]事をトムさんのやうだとよく言ひますが、全くトムさんはお人好しでした。随分よく働きます。それに無口で大力で正直で何ひとつも欠点がありませんでしたが、唯そのお人好しがあんまり過ぎるので困りました。
 トムさんは三人ものお嫁さんを貰ひましたが、ふしぎに二三日たつと三人ともみな逃げ帰つてしまつたのでした、それには色々のわけがあるのです。最初のお嫁さんを貰つた時でした。トムさんは大変お嫁さんを可愛がつて一粒の豆でも仲善く半分頒合つて食べる程でしたから、お嫁さんも大変満足して居たのでした。
 処が丁度、お嫁さんをもらつて三日目の真夜中頃ミシリ/\と屋根で音がしたと思ふと、天井の空窓から太い繩を下して三人の泥棒がトムさんの家へ忍びこんだのです。三人の泥棒はグウグウ高鼾で寝込んでゐるトムの枕元に立つて不意に枕を足で蹴飛ばしましたので、トムさんは吃驚して眼を覚しました、トムさんは自分の眼の前に背のヒョロ高い顔の真黒い鬚だらけの泥棒がによつきり突き立つてゐるので、トムさんは驚くまいことか、一時は腰を抜かさんばかりに吃驚しました。然しお人善しのトムさんはやがて泥棒に向つて「お前さん方は商売とはいゝ乍らこの真夜中に御苦労さまの事です、まあご一服唯今お茶を差しあげます、然し皆様私は昨夜戸締りもあんなにしつかりしてをいたのにどこから入つて来ました」かう尋ねました。

(二)
 泥棒達はお互に眼を白黒させて居りましたが、その内の一人が「俺達はこの空窓から飛び込んだのさ」と答へました。トムさんは之を聞いて「それはあぶない所から這入つて来ましたね、一寸表戸をトントン叩いて下されば直ぐ開けるのでしたのに」と云ひました。泥棒達はまご/\して居て隣近所に騒がれては大変とトムさんの家の真ん中へ持つてきた一反風呂敷を各々ひろげまして棚の物やら何やら片つ端から入れはじめました。これをじつとみてゐたトムさんは何と思つたのか、自分も向う鉢巻をして泥棒達と一緒に自分の家の品物を「これもあげる」「あすこにも有る」と大汗でドンドン拠り出したのでトムさんのお嫁さん始め泥棒達何が何やら訳がわかりません。
 さて泥棒達は風呂敷に包めるだけ品物を包んでしまふとさつさと出て行かうと致しました。するとトムさん何と思つたのか泥棒を呼びとめて「お前さん達は案外欲の無い人達ばかりですね、まだ室の中にこんなに品物が残つてゐるではありませんか」といひました。
 すると泥棒達は振り向いて、
「君の親切は有難いが何分俺達は之以上もてないので残念だが、お前さんにお返ししてをくよ」といひました。トムさんは「それはいけない私があげようとする物をもつて行かぬといふ失礼な事が有るものですか……あゝよい事が…

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