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旅人
たびびと
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「宮本百合子全集 第二十九巻」 新日本出版社
1981(昭和56)年12月25日初版
初出「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社、1981(昭和56)年12月25日
入力者柴田卓治
校正者土屋隆
公開 / 更新2009-04-02 / 2014-09-21
長さの目安約 7 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

    人物
旅人
子供三人
A 無邪気な晴れ晴れしい抑揚のある声の児
B 実用的な平坦な動かない調子で話す児
C 考え深い様な静かな声と身振りの児
    場所
小高い丘の上、四辺のからっと見はらせる所(講堂の段の上を丘に仮定)
    時
夏の夕暮に近い午後

B、Cが丘の中程の木の切り株に並んで腰をかけて、編物をして居る。
B子は赤い毛糸。
C子は青い毛糸。
編棒を動かしながら二人は気が落ついて居るらしい口調で話して居る。

B ねえCちゃん、今日は私一度もAちゃんに会わないのよ。
 どうしたんでしょう。
C ほんとにねえ。
 若しかひょっとしたら病気なんじゃあないの?
B そうねえ。
Bは何か思い出すらしく考えて居る。
やがて思いついたらしく、膝を叩いて嬉しそうに笑いながら、
B Cちゃん、私共はまあ、馬鹿な心配をしちゃったわ。
 ほら、貴方おぼえてない?
 こないだこの次のお祭りの日に町の叔母さんのところへおよばれだって云ってたじゃないの。
 今日はそれで行ったのよ、ね?
 そうじゃあなくって。
C そう云えばそうねえ、ほんとに。
 私もうすっかり忘れて居たわ。
 じゃあ、もうじき此処を通るでしょうね。
 少しお家へ帰るのをおそくして一緒に行きたいわ。
 貴方、そうしなくって?
B ええ、ええ、ほんとにそれがいいわ。
 もう少し待ってて見ましょうね。
 きっとお土産を沢山抱えて来るに違いないわ。
C 私町のお話をききたいわ。
 可愛い児が沢山居るんだってねえ。
 大きなお家がならんでるんだってねえ。
 まあほんとに私が行って見たらどんなだろう。
Cは手を止めて向うの方をながめる。
沢山の家並やかすかなどよめきに想像をたくましくして居るらしい様子。
B 私これを明日迄にしあげなけりゃ。
Bはうつむいて、せっせっと編みつづける。
Aが旅人と一緒に丘のだらだら坂をあがって来る。(手に花の入ったかごを持つ)
(檀に上る段々をだらだら坂のつもり)Cが見つける。
C ああ、Bちゃん、Bちゃん、
 Aちゃんが来た事よ。
(のびあがる)
B まあほんとにねえ。
 あれ、誰だかよその人をつれて来てる事よ。
旅人が二人に近づく。
二人は少しはにかんだ様にかたまる。
A(気軽に旅人からかけぬけて二人のそばにより)この「おじさん」とね、あの樺のとこから一緒に来たのよ。
 今夜私の御家へとめて頂戴って。
 そいでね、御馳走してあげるから私達にお話して頂戴ってお約束したのよ。
 ねえ、おじさん。
B まあそう。
 そりゃあ、ほんとに面白いわ。
 さあ聞かせてちょうだいな。
A、Bは旅人の傍にすり寄る。
C子は旅人を観察する様な顔をして少しはなれて立って居る。
たちあがった拍子に落ちた青い毛糸の玉がころがって居る。
旅 なかなか抜目のないお子達だ。
 おじぎだけでは許されそうも…

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