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豚吉とヒョロ子
ぶたきちとヒョロこ
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「夢野久作全集1」 ちくま文庫、筑摩書房
1992(平成4)年5月22日
初出「九州日報」1926(大正15)年1~3月
入力者柴田卓治
校正者江村秀之
公開 / 更新2000-05-18 / 2014-09-17
長さの目安約 114 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 豚吉は背の高さが当り前の半分位しかないのに、その肥り方はまた普通の人の二倍の上もあるので、村の人がみんなで豚吉という名をつけたのです。又、ヒョロ子も同じ村に生れた娘でしたが、背丈けが当り前の人の倍もあるのに、身体はステッキのように細くて瘠せていましたので、こんな名前を付けられたのです。
 村の人はこの二人を珍らしがってヤイヤイ騒ぎますので、二人は外へ出ることも出来ません。そのうちに二人とも立派な大人になりました。
 ある時、村の人たちの寄り合がありましたが、その時に誰か一人が、
「あの二人を夫婦にしたらなおなお珍らしかろう。村の名物になると思うがどうだ」
 と云いますと、みんな一時に、
「それがいいそれがいい」
 と手をたたいてよろこびまして、そこに居た二人の両親にこの事を話しますと、両親も、
「村の人がみんなですすめられるのならよろしゅう御座います」
 と云いました。それから二人に聞いて見ますと、二人はまだ会ったことはありませんが、かねてからお互に人と違った身体を持っていることを思いやって、両方で可愛そうに思っていたところですから、喜んで承知いたしました。
 村の人はいよいよ喜びました。
「サア面白いぞ。世界中にない珍らしい夫婦がこの村に出来るのだ。村中で寄ってたかって大祝いに祝え」
 というので、大騒ぎをやって用意をしましたので、まるで殿様の御婚礼のような大仕かけな婚礼の支度が出来ました。
 そうして、いよいよ婚礼の儀式がある晩となりますと、村中の人は皆、あらん限りの立派な着物を着飾って、神様の前の広場に集まりました。
 神様の前の広場には、作り花で一パイに飾られたお儀式の場所が出来ていまして、そのうしろに出来た宴会場には、村の人々が作った御馳走やお酒が一パイに並んでいます。まわりには篝火がドンドン燃やしてありますので、そこいらは真昼のように明かるく見えました。
 そのうちに、町から来た楽隊が賑やかな音楽を初めて、時間が来たことを知らせましたので、みんな神様の前に集まって、礼服を着た神主と一所に、珍らしい夫婦の豚吉とヒョロ子が来るのを今か今かと待ちました。
 けれども、いくら待っても夫婦の姿は見えませんでした。
 そのうちに、二人を迎えに行った美しい花馬車が二台帰って来ますと、それには二人の姿は見えず、二人の両親が泣きながら乗っておりましたが、みんなの前に来ますと、
「皆さん、申しわけありません。二人は逃げてしまいました」
 と云いました。
「サア、大変だ」
 と村中の人は騒ぎ出して、儀式も御馳走も打ち棄てて、大勢の人々が夜通しがかりで探しましたが、二人の姿はどこにも見えませんでした。
 豚吉とヒョロ子は、こうして大勢の人々が騒いでいる時、村からずっと遠い山道を手を引き合ってのぼっておりました。
「ふたりで夫婦になったら、今迄よりもっともっと恥かしくな…

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